妊娠後、妻のことがわからなくなった…「あなたと結婚したのが間違いだった」と告げられて “まじめすぎ”に疲れた45歳夫の嘆き

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【前後編の前編/後編を読む】不倫バレ&流血沙汰から1年…「無視されるのがいちばんつらい」 “沈黙の妻”と向き合えない45歳夫の苦悩

 不倫がバレる。シタ側にとって、一般的には、おそらくもっとも「あってはいけないこと」だろうが、ともかくバレてしまった。その後、夫婦はどういう道のりをたどるのか。揉めたけれどやり直すのか、離婚するのか。結果しかわからないことが多いが、まさに「揉めている」最中の男性に話を聞くことができた。

 吾妻晃太さん(45歳・仮名=以下同)は、目の下にうっすらクマを作った顔で苦笑いをしていた。筆者の知り合いが紹介してくれ、晃太さんは快く会ってくれたのだ。

「不倫がバレてから1年ほど、妻との関係は膠着状態です。もともと僕は離婚するつもりはない。妻も離婚する気はないらしい。それならやり直すしかないでしょ。それなのに彼女は前向きにやり直そうとはしないんですよ。どうしろって言うんだとつい昨晩もケンカになってしまった。疲弊するだけです」

妻という人間がわからなくなって

 晃太さんが結婚したのは33歳のときだ。1年ほどつきあっていた沙保里さんが妊娠したのを機に婚姻届を出した。彼女と結婚するつもりだったが、きっかけがつかめなかったので妊娠したと聞いて喜びが沸き起こった。

「沙保里に結婚願望がなかったんですよ。僕は、女性というのは相手を好きになれば結婚したいと思うはずだと感じていたから、恋愛と結婚を別に考える沙保里が新鮮でおもしろかった。でも結婚してから、彼女はガラッと変わったし、僕自身も考え方が変わっていった。ふたりの価値観は、どんどんズレていったのかもしれません」

 仕事が何よりも大事だと言っていた沙保里さんだから、晃太さんは当然、共働きになると思っていた。ともに仕事をし、ともに子育てをするのが理想だった。だが沙保里さんは結婚と同時に、晃太さんになにも言わずにあっさり仕事をやめた。無事に子どもを生みたいからと平然と言ったが、晃太さんは少し焦った。

「沙保里という人間が急にわからなくなった。共働きの家庭になると思い込んでいたけど、彼女はそうは思っていなかった。もしかしたら、今後も想定していないことがたくさん出てくるのかもしれないと怖くなった。そもそも、僕の給料だけでやっていけるとは思えなかったから、経済的に厳しいよねと沙保里に言ったんです。すると彼女は『あなたががんばるしかないでしょ』って」

まじめすぎる女性

 新婚生活はそうやって始まった。晃太さんは沙保里さんには言ってなかったが、実は副業をもっていた。さらに少しずつ投資も始めた。

「もともと起業したいという気持ちがあって、結婚したころ友人と会社を立ち上げました。少し軌道に乗ってから妻に言うつもりだったんだけど、彼女がいきなり会社を辞めたので、僕は言い損なってしまった。言わないほうがいいかもしれないと感じたのは、やはり妻を100%信頼はできないと思ったからかもしれません」

 子どもは双子だとわかった。晃太さんはうれしくてたまらなかったが、沙保里さんは「どうやってふたりも育てていけばいいんだろ」とつぶやいた。沙保里さんは、妊娠したこと、結婚して家族ができることをきちんと受け止めていなかったのかもしれない。学生時代から優等生で、卒業してからは仕事一筋だった。30歳直前で晃太さんと出会い、初めて男女の関係をもった。まじめだからこそ、仕事と家庭の両立は無理だと考えて仕事を辞めた。

「彼女、けっこうさばけている女性のようにふるまっていたけど、実際は超がつくほどまじめだった。あとからわかったんですが、会社の中でも仕事はできるけど人間関係がうまくいっていなかったらしい。不器用なんですよね。でも本人はけっこうプライドが高い。つきあっているときには見えてこなかった沙保里の性格が、一緒に暮らすようになって徐々にわかってきました」

 それならそれで対応していくしかなかった。沙保里さんの実家は、晃太さんたちの新居からほど近い。当時、すでに退職した父と母はふたりだけで暮らしていた。

「子育てについてはお義母さんに来てもらえばいいと言ったら、沙保里は『母とはつきあいたくない』と。どうやら母娘の間には大きな軋轢があったようです。そんなことも結婚前には聞かされていませんでしたが」

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