ゴタゴタが続く巨人 球団内部から不満の声が…阿部監督が抱える“不安要素”
各球団が来季に向けての様々な動きを見せているなかで、巨人は、多くの話題を集めている。巨人は、10月22日に岡本和真がポスティングシステムでのメジャー移籍を容認する方針を発表。長く活躍してきた主砲の移籍は、チームにとって大きな痛手であるが、これは今オフの混乱の序章にすぎなかった。【西尾典文/野球ライター】
やる気がないなら来なくていい
10月28日には桑田真澄・二軍監督の退団が決定。巨人の二軍は、今年イースタン・リーグで優勝を果たしており、前日の27日まではフェニックス・リーグで指揮を執っていた。まさに“電撃退団”という印象を受けたファンも多かったはずだ。
さらに11月17日には、捕手の山瀬慎之助が自身のXに「あれ、大した活躍してなかったら保留したのになかったことにされるの? 悲しい」と投稿。山瀬は2019年のドラフト4位で星稜から入団し、二軍では毎年結果を残しながらも、なかなか一軍昇格を果たせなかった。今年は二軍で100試合に出場し、打率.302、3本塁打、24打点の好成績をマークしながら、一軍出場はわずか1試合に終わったことに対して不満が募っていたと見られている。当日中にこの投稿は削除され、同月27日には2度目の交渉で契約を更改したが、交渉の場で「来年も(一軍の出場機会が得られない)同じような形だったら違う選択肢を考えてほしい」と球団側に要望を伝えたという。
そして、山瀬が契約を更改した翌日の28日。巨人は突然、外野手のオコエ瑠偉を自由契約としたことを発表したのだ。オコエは2015年のドラフト1位で楽天に入団。2022年オフに現役ドラフトで巨人に移籍し、今年は一軍で61試合に出場した。しかし楽天時代から練習態度など取り組みの甘さが指摘されることも多かった。
「秋季キャンプでのオコエの練習態度は明らかに気持ちが入っていなかったようです。それをコーチから指摘されて『やる気がないなら来なくていい』と言われたら、本当にそのまま来なくなってしまったと聞きました。その後どのような話し合いがあったかまでは分かりませんが、能力はある選手だけにもったいないですね」(巨人の球団関係者)
今後は海外を含めてプレーするチームを探すと言われている。この時期に突然退団することは、オコエと球団の双方にマイナスの印象を周囲に与えたことは確かだ。
立石に行けばよかったのでは
では、このような騒動が続く背景にはどんな事情があるのか。前出の関係者によると、現在の体制と巨人の球団体質が影響しているのではないかと指摘する。
「巨人は長く、原辰徳監督が全権監督として、編成なども含めて指揮を執っていましたが、現在はそこまで影響力のある人はいません。そんな中で昨年から阿部監督が指揮をとることになり、まずは現場の意見を優先しようという空気が強くなっているように感じます。昨年のオフに甲斐拓也をFAで獲得した時も、『必要ないのではないか』という意見がありましたが、最後は阿部監督の意向が反映されたようです。実績のある大城卓三と、成長してきた岸田行倫がいて、さらに甲斐も加われば、山瀬にとってはなかなか出番がないですよね。桑田二軍監督の退任についても、そういう球団の方針と合わなかった部分もあったのではないでしょうか。だからといって、阿部監督が原監督のような全権を持っているわけではありません。巨人は代々、編成を担当するフロントサイドは誰か一人が強い責任を持つのを避ける傾向が強い。結果が出ないと、すぐに責任をとらないといけないからです。現場の意見を尊重して判断すれば、責任を回避できる言い訳ができると思います」
過去には清武英利氏がGM(ゼネラル・マネージャー)を務めたが、渡辺恒雄会長(当時)をコンプライアンス違反で告発したことで解任となり、大きな話題となった。その後は堤辰佳氏、鹿取義隆氏がGMを務めた時期はあったものの、いずれも短期間で退任となっている。現在は吉村禎章氏がCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)という役職で責任者となっているが、水野雄仁氏が編成本部長を務めており、誰か一人に強い権限があるという状態ではないのだ。
現場の意見が尊重されている影響は、今オフの騒動以外にも見られている。10月23日に行われたドラフト会議では大学生ナンバーワンスラッガーの立石正広(創価大→阪神1位)が最も注目を集めており、最終的には3球団が競合したが、巨人は早々に社会人左腕の竹丸和幸(鷺宮製作所)の指名を公表し、一本釣りに成功した。
さらに、2位で田和廉(早稲田大)、3位で山城京平(亜細亜大)と大学生の投手を続けて指名している。ドラフトの結果について前出の球団関係者は、以下のように指摘している。
「岡本和真が抜けることを考えると、スカウト部からは立石を推す声が強かった。ただ、立石は競合することが確実で、また獲得できたとしても、野手は一軍の戦力になるまで時間がかかる。来年が3年契約の最終年となる阿部監督としては、すぐ使える投手を最優先してほしいとの要望は強く、それで竹丸を選んだ。2位の田和も大勢や船迫大雅のような変則投手で、リリーフなら早く一軍で使える可能性があるから、上位で指名したという話ですね。結果を見ると、立石は3球団競合で意外に指名した球団が少なかったので、それならば、立石に行けばよかったのではないかと思ったスカウトもいましたね」
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