34歳にして「3度目の日本新」! ロス五輪を視野に「大迫傑」が駆け抜ける“葛藤と挑戦”のマラソン人生

  • ブックマーク

世界陸上の結果が与えた希望

 大迫は正式に2028年ロサンゼルス五輪のマラソン代表候補に名乗りを上げる形になった。このレースも、マラソン日本代表を決めるMGCのポイント対象レースになっているからだ。

 大迫は現在34歳、28年夏は37歳で迎える。これから約2年半、我々は「37歳で五輪マラソンのメダル獲得を目指す大迫傑の挑戦」を見せてもらえる。

 第三者から見ればその「年齢」こそが最大の課題のように感じるだろう。だが大迫にすれば、「できる」と感じるから挑戦しているのであって、本人が直面する難問はもっと他にあるのではないか。

 年齢について、先に楽観的なデータを紹介しよう。世界記録ランキングの2位キプチョゲ(ケニア)2時間1分9秒、3位ベケレ(エチオピア)2時間1分41秒はいずれも彼らが37歳の時にマークした記録だ。1984年のロサンゼルス五輪、真夏(8月)に行われた男子マラソンで並みいる優勝候補を退けて金メダルに輝いたのも、37歳のカルロス・ロペス(ポルトガル)だった。37歳は日本人のイメージではアスリートとして峠を越えた印象があるけれど、世界に目を向ければ決してそうとは言い切れないのだ。

 むしろ、大迫自身がいまもそして若い頃もずっと闘い続けているのは、「日本人であること」「日本という社会環境と陸上界の常識」の方ではないだろうか。

 大迫が、雑誌「Number」のインタビューで、今夏の東京世界陸上の結果を気にしている様子が興味深い。これまで1500メートル、5000メートル、1万メートルといえば、アフリカ勢の独壇場だった。ところが、東京世界陸上でケニア、エチオピアの選手は金メダルをひとつも獲れなかった。白人選手が5つのメダルを獲得した。さらに10月のシカゴ・マラソンではコナー・マンツ(アメリカ)が2時間4分43秒で走ったことに大迫は注目している。

 ライバルがアフリカ勢だけではなくなったこと、同時にアフリカ系でない選手でもトレーニングによってタイムの短縮が可能だという実例は、大迫に希望を与えたに違いない。

次ページ:リーニンは年商6000億円を超える大企業

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。