「子グマが空き家や車庫で“冬眠”する懸念も…」 冬眠方法を知らない子グマが急増中の理由

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「冬眠しないクマ」が各地で目撃されている。“穴持たず”とも呼ばれる、冬に出没するクマの多くが、実は子グマなのだという。背景にあるのは、今年に入って急増している捕獲数と、エサになるドングリなどの凶作だ。それにより、新たな“クマ被害”も懸念され……。

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 北陸地方ののどかな田園地帯に突如、静寂を切り裂く悲鳴が上がったのは12月4日未明のことだ。

「新聞配達中だった高齢の夫婦が相次いでクマに襲われたのです。最初に夫(75)が、続けて付近で配達していた妻(70)が襲撃され、共に顔などに大ケガを負って救急搬送されました。二人とも命に別状はありませんでしたが、現場には多量の血痕が残されていました」(通報を受けた富山西署関係者)

 襲撃場所は、田んぼが広がる富山市婦中町の一画にある住宅地だったといい、

「前夜から降り続いた雪の影響で、気温は氷点下近くにまで下がっていました。夫のほうは午前2時40分ごろ、配達していた民家の玄関先で襲われたものの、悲鳴を聞いた80代の家人が表に出てきてクマの頭部にパンチを2発くらわせて撃退。その後、女性の叫び声を耳にした近隣住民が駆け付けたところ、妻は鼻や口から血を流しながら“クマに馬乗りになられた”と説明したそうです」(地元メディア関係者)

 現場から逃走したクマの行方はいまも不明で、地元猟友会などによる捜索が続いている。

 近隣住民の一人はこう不安を漏らす。

「どこに行ったか分からないから、怖くて外にも出られない。12月にクマが出るなんて、30年住んでるけど初めてのこと。てっきり冬眠しているとばかり思っていたから、余計に不気味ですよ」

 二人を襲ったのは同じクマとみられ、目撃情報によると体長は約1メートル。「子グマの可能性が高い」(前出のメディア関係者)という。

「目撃された全てが子グマ」

 富山県以外でも、12月に入って北海道や青森、新潟、長野、山口の各県で子グマの目撃情報が寄せられている。

 岩手県の北上市猟友会会長の鶴山博氏(76)によれば、

「例年であれば、クマを見かけるのはせいぜい11月20日ごろまでです。それ以降は目にすることはまずなかった。ところが今年は、北上市内だけで先月20日と28日、さらに今月5日に目撃され、しかも全てが子グマでした。28日のケースでは、小学校の敷地内に入り込んだ末に捕獲されましたが、鋭い爪をしていて、子グマといっても容易に人を傷つけることがあり得ると実感しました」

 通常、クマは11月後半から3月ごろまで冬眠し、この期間の目撃情報は急減する傾向にある。しかし今年は「冬眠しないクマ」が各地に現われ、中でも子グマの出没事例が際立っているのだ。

 山梨県では昨年11月に目撃されたのは33頭、うち子グマ(単体)は7頭だった。しかし今年は63頭(11月)と倍増し、うち子どもは20頭(同)と約3倍に上った。

 鶴山氏はその理由として、

「昨年、私の管轄エリアで駆除した数は5~6頭に過ぎません。しかし今年はすでに40頭近くを駆除しています。クマのエサとなるドングリが今秋は凶作だったため、食べ物を求めて山から市街地に下りてくるクマが増えているようです。出没数が多くなった分、駆除数も7倍程度に膨れ上がったわけですが、その結果、親を失った子グマを数多く生み出したのかもしれない。本来、幼獣は親から冬眠の仕方を教わりますが、駆除がその妨げになっているのでは……」

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