「浮気相手に会ってもらいたい」義父の頼みに嫌とはいえず…結果、40歳夫は誰にも言えない秘密を抱えるハメに

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1度彼女に会ってもらいたい

 きみには1度、彼女に会ってもらいたいと言われた。それは美緒さんと継母を裏切ることになりそうな気がしたが、男同士の関係も大事にしたい。なにより翔一郎さんは、そのバーのママである季枝さんに興味がわいた。

「美緒には黙って、数日後、義父と一緒にその店に行きました。店ではあくまでも客とママという関係だからと義父に言われたので、僕もおとなしく飲んでいるだけ。でも少し人がいなくなったタイミングで、季枝さんと話すことができました。接客を見ているだけでも、プロだなと思ったし、言葉をかわしてもとにかく気持ちのいい人。自立していると義父がいうのもわかる。素敵な女性でした」

妻のブラックな部分を知って

 そうやって義父と「秘密」を共有しあった翔一郎さんだが、一方で美緒さんの継母にも相談をもちかけられた。継母は離婚するつもりはなかったようだが、「自分が後妻だからバカにされているんだろうか」という被害者めいた気持ちをもっていた。

「発覚後も義父は継母に冷たくなるわけでもなく、ただひたすら謝っているだけだそうです。だからこそやりきれないと継母は言う。『私はふたりの関係を認めるしかないのか』と。妻という立場はこんなに弱いのかとも言っていました。立場にこだわるより、あなたが義父のことが好きなら結婚生活を続けていくしかないのではないか、受け入れられないなら離婚するしかない。ゆっくり考えてとしか言えなかった。義父は、バレたからといって彼女と別れるとは思えなかったから。美緒は『私もショックだったけど、よく考えれば、お父さんに女性のひとりやふたりいても不思議じゃないわよね』と言いだした。『継母もそのくらい理解すればいいのに』って。やはりどこかで、ざまあみろという気持ちがあるんだろうなと思うとちょっと怖かったですけど」

 美緒さんに潜むブラックな部分を翔一郎さんは受け止めきれなかった。誰にでもブラックな面はあるのだろうが、美緒さんは実母に対しても継母に対しても、長くその闇を引きずり続けている。一方で、父の不倫には急に寛大になっていた。

「不倫がいけないという道徳観や倫理観ではなく、父なら許せるという価値観なんでしょうね」

 一時は毎日のように継母から愚痴のメッセージが届いたが、その後、継母も少しずつ落ち着いてはきた。ただ、このままだったらいつかは離婚を考えざるを得ないかもしれないという気持ちも聞いている。

翔一郎さんにも“魔”が差して…

 一方、翔一郎さんは義父から「ツケでいいから例のバーにときどき行ってやってほしい」と言われているので、たまに足を向けてきた。同僚を連れて飲みに行ったこともある。気持ちのいいバーだからと、同僚がその友だちを連れて行き、客層が広がったとママに喜ばれた。

 翔一郎さんは、そこでふと声を落とした。

「店はママの実妹が手伝っているんですが、紗里さんというこの妹さんがまたいい人でして……」

 ママはあっさりさっぱりした姉御肌だが、紗里さんはもう少しおっとりしたタイプ。その紗里さんを翔一郎さんは好きになってしまったのだという。

「客観的に見たら、義父の愛人の妹ですからね。そういう立場の人とどうこうなるわけにはいかない。紗里さんは僕より3歳年上、美緒と同じ年なんです。結婚していたこともあるけど今は独身で子どももいない。『以前は塾講師をしていた。姉が店を始めてしばらくたったとき引っ張り込まれて。だから接客は今も苦手』という彼女ですが、姉であるママとの対比でいい味を出しているんですよ。たぶん、自分の役割をわかってるんだろうと思う」

 積極的に前には出ていかないが、それとなく全体を見渡して雰囲気をいつもニュートラルに修正するのが紗里さん。ときに熱くなるママを冷静にさせるのも紗里さんだという。

「人って、そっちに行ったらダメだとわかっているのに行ってしまうことがあるような気がするんです。紗里さんに対してはまさにそうで、ここで関係をもったりしたら、とんでもないことになるとわかっていながら、ドツボにはまってしまいました」

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