市役所で“ひとりの職員”による苛烈なパワハラが放置され続けた事情…「もはや放置ではなく“隠ぺい”ではないでしょうか」

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1年以上放置した市

 Xによるパワハラはそれぞれ辛辣な内容ではあるが、本件において何よりも問題なのは、こうした長年のパワハラに対して行われた内部通報が、1年以上も放置されていたことにある。

 2024年7月、ある交野市役所職員が、暴行1件を含む9件のパワハラ行為を内部通報した。

 その通報者は通報時、客観的根拠を提示し、さらに証拠となる録音データの在り処も明確に知らせているうえ、被害者へ直接ヒアリングをするようにともはっきりと伝えている。しかし当局は翌8月、内部通報者に「証拠」の提示を要求。その後、1年以上もヒアリングなどを行わず、内部通報を放置してきた。

 今年10月27日、被害者たちによる記者会見が開かれると、慌てたように山本市長がその翌日に記者会見。1年放置した理由として市長は、「客観的・合理的な根拠の提出を通報者に求めていたのに、提出がなかったから」と主張した。

 証拠の在り処をはっきりと明示し、調査してほしいと訴えているにもかかわらず、「証拠を持って来なかったから調査しなかった」は、市の姿勢として正しいのだろうか。

「内部通報者に『証拠を持って来い』というのはおかしい。そもそも証拠はそれぞれの被害者が管理していて、内部通報者は証拠を持っていなかったんです」(市関係者)

「いじめが起きている。自分は当事者じゃないので直接被害者に聞きに行ってほしい」という声に、「ならば自分でその証拠を持って来い」とするその姿勢こそ、交野市のパワハラ体質そのものではないのだろうか。

 そもそもこれだけ長い間、かつ多くの被害者が存在し、なかには暴力を振るわれ診断書を取り休職したのち退職した職員もいる状況で、X氏に近い上層部が「聴いたことがない」「庁内におけるパワハラ・暴力の存在を知らなかった」わけがない。

 12月8日に行われた市議会において「パワハラが起きているという噂を聞いたことがないのか」という質問に、回答者の総務部長は回答せず。

 この総務部長は、Xとズブズブの関係にあるとし関係者が口を揃えて指摘する張本人だ。

 さらにこの総務部長は、内部通報があった後に被害者たちへ話を聞かなかった理由として、「正式に人事課に対し内部通報が行われている以上、内部通報の高度の秘匿性から、気軽に職員に話を聞くべき内容ではなかった」と謎の釈明をしている。

 しかし、繰り返しになるが、内部通報時に通報者は明確に調査を依頼している。その依頼を「放置」するという選択肢は、どんな釈明も納得に値するものにはならない。無記名アンケートの実施など、いくらでもやり様はあったはずだ。

 さらに、交野市が示す「証拠」に対して市の関係者は違和感があるとする。

「交野市の内部通報制度の要綱には『客観的根拠』とあり、「証拠」とは記されていないんです。市が『“証拠”が提出されなかったから動かなかった』と主張しても、それはまかり通らない。そもそも本来は証拠なんて本来用意できるものではない。予告をしてパワハラする人なんていませんからね。もし、証拠を出せというなら、僕らは胸ぐらを掴まれた瞬間に『ちょっと待ってくださいね』と、被害を受けている自分を撮影しないといけなくなる」

 それでも今回、多くの被害者が「証拠」として録音を残せているというのは、Xによるパワハラが1度や2度ではないこと、常習的に行われていたことを裏付ける何よりの証左ではないのだろうか。

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