大ヒット作「代紋TAKE2」の漫画家が明かす“デジタル化で激変”した制作現場 …「SNS投稿を見出されてデビュー」「作画の技術はYouTubeで学ぶ」ケースも
お金を出せばアシスタントは集まるかもしれないが……
――アシスタントを確保するうえで、苦労はありますか。
渡辺:アシスタント不足とはいうものの、デジタルを作家本人が学べば、最小限のスタッフでもなんとか回せると思うんですよ。漫画を描いている人は多いのですから、結局のところ、他よりもたくさん給料を払えば、人は集まると思う(笑)。それこそ、アナログのアシスタントだって集まると思います。
ただ、今は師弟関係の感覚がないですから、作家とアシスタントの結びつきが弱まっています。その人が長くレギュラーで仕事をしてくれるかどうかは、また別の話ではないでしょうか。たびたびアシスタントが変わったりすると、漫画家の苦労も大きいと思います。
――渡辺先生も、新人時代にアシスタントをしながら学んだことはたくさんありますか。
渡辺:やはり、師匠のもとで作品を作る過程や、苦しんで仕事が遅れるといった現状を目の当たりにできたのは大きな経験でした。アシスタントは僕にとって、プロの世界を知る第一歩でしたから。今はデビューの間口が広がったのは素晴らしいことですが、そういった経験をする新人が減っていくのは少し残念です。
アナログ時代、漫画家の元にアシスタントに入る人は、漫画家になるぞという覚悟を決める必要がありました。だからこそこだわりも強く、しがみつく人が多かったと思います。もちろん、こだわりが強いからといってデビューできるわけではないですが、少し失敗しただけで漫画家の道をあきらめることはなく、粘り強かったと感じます。
アシスタント先に行けば、師匠の漫画家はもちろんですが、周りに漫画家を目指すアシスタント仲間がたくさんいて切磋琢磨できました。これは何物にも代え難い経験で、リモートでは得られないものではないかと思います。もっとも、そういう精神論的なことを言い出すと、時代や世代の違いだと言われそうですが……。
第1回【北海道や九州在住のアシスタントがリモートで作業…「代紋TAKE2」の漫画家・渡辺潤さんが語る「それでもペン入れだけはデジタル化しない」理由】では、人気漫画家の渡辺潤さんに、急速にデジタル化が進む漫画の制作現場の実態と、その中でもアナログ部分を残す理由について、詳しく伺っている。
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