北海道や九州在住のアシスタントがリモートで作業…「代紋TAKE2」の漫画家・渡辺潤さんが語る「それでもペン入れだけはデジタル化しない」理由

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遠くにいる人にアシスタントを頼める

――コロナ禍では様々な企業がリモート化を図り、一時は通勤電車から人が激減し、そうした働き方が定着するかのように見えました。しかし、コロナ禍が収束すると、もとに戻った企業がたくさんあります。ところが、漫画家の間ではアシスタントのリモート化が定着したように思います。メリットはどんな点にありますか。

渡辺:僕のアシスタントは、現在はレギュラーが5人、臨時のヘルプが1~2人いるのですが、スタッフがどこに住んでいても手伝ってもらえる。これでアシスタントの人材不足を補えている面はあると思いますね。

 アナログの時代は職場に来てもらう必要がありましたが、今は北海道、静岡、九州在住の人に頼んでいます。かつて僕のアシスタントをやっていて、その後、実家に戻った方にもお願いしています。こうした依頼ができるのは、大きなメリットでしょう。

――アシスタントの作業時間は、デジタル化によって短縮されましたか。

渡辺:昔と比べると、明らかに短くなったと思います。ただ、僕がアナログでやるペン入れのスピードが、年齢の影響や体力の衰えによって遅くなってしまいました。それに、スタッフが横にいれば、疲れていても気合いを入れて踏ん張るところを、1人だとつい寝てしまうんですよね。

 だから、僕の職場に関して言えば、確かにアシスタントの作業は楽になったかもしれないけれど、原稿が上がるスピードはそれほど変わっていないかもしれません。

――渡辺先生は、ペン入れもデジタルに移行して“完全デジタル化”を図る予定はないのですか。

渡辺:おそらく、横で教えてくれる人がいたら習得できると思うし、勉強したい気持ちはあります。けれども、目の前にこれからやらないといけないネームや、ペン入れする原稿があると、なかなか本腰を入れて勉強する気にならないんですよね。それに、僕はなんだかんだで、アナログで絵を描くのが好きなんですよ。

 僕の絵は、劇画的な細い線を重ねた描写が多く、特に細い線の“抜け”が重要なのです。これはアナログのペンなら表現できますが、デジタルでは難しい。だから、どうしてもアナログにこだわってしまいます。あと、目の前にある原稿を見て最終的な仕上がりを確認する作業を35年続けてきたので、今になって切り替えるのが不安で。それが、完全デジタル化ができない理由ですね。

第2回【大ヒット作「代紋TAKE2」の漫画家が明かす“デジタル化で激変”した制作現場 …「SNS投稿を見出されてデビュー」「作画の技術はYouTubeで学ぶ」ケースも】では、第1回に引き続き、デジタル化が急速に進む漫画の制作現場の実態を、人気漫画家の渡辺潤氏に伺った。

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