「褒めるだけ」の審査はもういらない…「THE W」新審査員・粗品に集まる“ガチ”評価への期待

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視聴者は物足りなさ

 プロの芸人の大半は男性であり、女性芸人は少数派である。そのため、「女性芸人限定のお笑いコンテスト」は、芸人全体で競い合うほかのコンテストに比べると、物足りなく感じられることがある。そういう意味で一部の視聴者は「THE W」に物足りなさを感じているのに、審査員は無難な褒めるコメントに終始していて、厳しい指摘をしない。そこに視聴者が不満をつのらせることになったのは無理もない。

 新審査員の粗品はこの状況を打破してくれる可能性がある。彼は率直な物言いで知られている。時には厳しい指摘もするが、それは芸人としての真摯な姿勢から来ているものである。こうした本音ベースの審査コメントは、視聴者にとっても新鮮で、番組自体のエンターテインメント性を高める要素になる。

 お笑いコンテスト番組の視聴者は、綺麗事だけの無難な審査よりも、プロフェッショナルな視点からの厳しくも愛のある評価を求めている。粗品自身もSNSで「俺がTHE Wを救う」と意気込みを語っていた。

 ただ、粗品一人が審査員に加わっただけで大会全体が劇的に変わるかといえば、それは難しいだろう。審査員は複数人いるわけで、全体の中で彼がどこまで影響力を発揮できるかは未知数である。また、結局のところ、番組の演出や構成、出場者のネタの質といった要素が大会の面白さを左右する。審査員の刷新だけでは解決しきれない構造的な問題もある。

 それでも、粗品の加入は確実に「THE W」にとってポジティブな変化をもたらすと考えられる。少なくとも、彼の審査コメントを聞きたいという理由で興味を持って視聴する人は増えるだろう。また、彼の存在がほかの審査員にも刺激を与え、審査全体のレベルアップにつながる可能性もある。

 結局のところ、「THE W」が低迷を脱するためには、審査員の刷新だけでなく、大会のコンセプトや演出、出場者へのサポート体制などの総合的な改革が必要である。粗品の加入は、その第一歩として意味のある試みだ。彼の鋭い視点と歯に衣着せぬコメントが「THE W」に新しい風を吹き込むことを期待している。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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