メッツ残留でも「千賀滉大」に試練? 復活のカギを握る“プロ経験なし”新投手コーチとは

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メッツに残っても……

 ニューヨークメッツ・千賀滉大(32)のトレード放出をめぐる議論はまだ終わっていなかった。地元ニューヨークのスポーツネット局「SNY」が「放出すべきではない」と報じ(現地時間12月3日)、千賀自身も残留を希望していることなどから「放出」の雰囲気は収まったようにも見えたのだが、そうではなかった。

「千賀のメッツとの契約は、27年まで残っています。残り2年分の年俸額は2400万ドル(約37億2000万円)とされており、2桁勝利を望める先発投手としては比較的安価なほうに分けられます。当初、メッツは千賀放出の見返りとして若い投手か、長距離ヒッタータイプの若手内野手を狙っているとされていましたが、交換要員で折り合いが付かなかったようです。ただ、12月10日(現地時間)まで行われていたウインターミーティングで、メッツに接触してきた球団がないとは言い切れません」(現地記者)

 他球団も千賀の実力を認めているのは間違いないようだが、メジャーリーグ3年目の今季は7勝6敗。防御率は3.02。シーズン序盤は好調だったものの、6月に一塁ベースカバーに入る際に右太股を痛め、復帰後のシーズン後半は本来の投球を取り戻せなかった。

 千賀が放出要員となったのはチームもポストシーズンマッチ進出が果たせず、急ピッチで「再建」を進めなければならないためだ。若手投手を使っていくには30代の投手を放出し、40人のロースター枠にも「空き」を作っていかなければならない。昨季から2年続けて成績を落とした千賀が真っ先に標的にされたというわけだ。

「編成本部長のデビット・スターンズ氏も、メディアの前で千賀の放出を認めるような発言を繰り返していました」(前出・同)

 しかし、千賀の残留希望が叶ったとしても、それで安堵することはできないだろう。来年のスプリングキャンプの早い時期にスターンズ本部長やカルロス・メンドーサ監督(46)に「復活」をアピールする必要もあるが、それだけではない。来季は投球スタイルを大幅に変えなければならない。その要となる「新しい投手コーチ」とうまくやっていけるのかも懸念されている。

「メッツはシーズン終了と同時に、6人のコーチを切り捨てました。その中にはチーム防御率を前年の3.96から4.03に悪化させたジェレミー・ヘフナー投手コーチ(39)も含まれています」(前出・同)

 新しい投手コーチに選ばれたのは、ジャスティン・ウィラード氏(35)。データ分析を本業とするアナリストだ。ツインズ、レッドソックスでアナリストとしてのキャリアを重ね、メッツに“大抜てき”された。

新任コーチの手腕

 メジャーリーグでは、プロ経験のないアマチュア野球OBが指導者になることは珍しくない。また、どのチームにもデータ分析を専門とするアナリストがいて、選手の健康管理を専門とするメディカルスタッフや、リハビリなどのトレーニング指導を専門とするコーチもいる。その点は日本のプロ野球チームも同じだが、「投手、打者、守備、作戦」の各分野において、元選手の指導者ではなく、アナリストが担当トップになるのはメジャーリーグだけだろう。ウィラード氏の抜てきも「メジャーリーグならでは」と言えばそれまでだが、こんな意見も聞かれた。

「メッツのような有名選手を多く揃えている球団は、アナリストを担当トップに据えることは滅多にありません。有名選手は実績もあるので、データ重視の助言をされても聞き入れてもらえず、衝突してしまうからです。もちろん、データ解析の重要性は全選手が認識していますが、アナリストがトップになるとうまく行かないケースも多いようです」(米国人ライター)

「アナリストが担当トップになることのデメリット」はメッツもわかっているはず。それでもウィラードコーチを選んだということは、マイナーでくすぶっている若手投手たちの底上げを含め、投手陣を立て直すには強いカンフル剤が必要と判断したからだろう。

 ウィラードコーチのレッドソックス時代の肩書きは、投手部門ディレクター。自身も大学時代はピッチャーを務めていたが、プロ経験は無い。アナリストとしてのキャリアスタートは米・ラドフォード大学野球部で、その後、ツインズを経てレッドソックスにやってきた。

「たとえば去年と今年で直球の回転数がこれだけ落ちた、変化球の軌道がこのように変わったなどの状況を数値化したり、映像を見せたりして改善を促していくのがウィラードコーチの指導法です。痛打されているカウントがあればそれも伝え、ウイニングショットの球種の見直しや、持ち球の変化球の割合を変えさせます」(前出・同)

 気になるウィラードコーチの評価だが、レッドソックスでの2年間で実際にチーム防御率が改善されたことを指して「有能な指導者だ」と称賛する声も多く聞かれる一方、同球団は24年オフに将来のサイ・ヤング賞候補投手と言われるギャレット・クロシェット(26)の獲得にも成功しており、投手成績の改善は「同コーチの手腕とは言い切れないところも多い」とする意見もあった。

「たしかに23年に4.52だったチーム防御率が、ウィラードコーチの来た24年は4.04になり、クローシェを得た今季は3.70(30球団中5位)まで回復しました。でも、投手指導の現場を仕切っていたのはアンドリュー・ベイリーコーチ(41)です。レッドソックス投手陣の建て直しはデータで改善ポイントを伝えたウィラードコーチのおかげなのか、技術指導をしたベイリーコーチの功績なのかは意見の分かれるところです」(前出・同)

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