もはや日常茶飯事な「地下アイドル」の活動休止トラブル…なぜファンと個人的に会ってしまうのか
地下アイドルが“不祥事”を起こし、グループ脱退に追い込まれる例が続出している。SNSにはたびたび謝罪文が投稿されているのを見かける。運営側は具体的な不祥事の内容についてはお茶を濁すが、要はファンと関係を持ってしまうなどのトラブルが原因である。言うまでもなくこうした行為はファンへの裏切りであり、SNSでも批判的な声が寄せられる。
しかし取材を進めると、「禁止と言われても、そうせざるを得ない」という地下アイドルの切実な事情が浮かび上がってくる。そもそも地下アイドルグループは数が多すぎるという問題を抱えている。さらに、グループのメンバー同士でも熾烈な競争が展開されている。結果、モラルなきファン獲得競争へと向かってしまうのである。【文・取材=宮原多可志】
歌って踊っても給料は月3万円
地下アイドルが解雇される理由は、ファンと個人的に会ったり、関係を持ったことがバレたりするケースがほとんどである。SNSには“アイドルの不祥事を探すことに生きがいを見出す人”が存在する。例えば、アイドルが投稿した写真のワイングラスに、わずかに映っている男性の姿を見つけ出し、SNSに報告するのである。
こうした写真が見つかってしまうだけで一発アウトだが、そもそもアイドルになる時点で、恋愛や、ファンと私的に会うことは控えるべきとわかりきっているはずだし、そうした契約のもとで不祥事を起こせば、強制的に引退させられるのも仕方がないだろう。にもかかわらず、そんなリスクを冒してまで、ファンと会うのはなぜなのだろうか。
最大の要因は、地下アイドルの給料がとんでもなく安いためである。月収が10万円以下であるケースもザラで、知名度がなければ5万円以下ということも珍しくない。したがって、基本的に副業をしなければ食べていけないため、アルバイトを掛け持ちしているのが普通なのだ。地下アイドル経験者が実情をこう打ち明ける。
「とにかくギャラが安くて、月3万円ということもありました。さらに、私の場合は事務所に所属するといっても社員になるわけではなく、個人事業主扱い。周りのメンバーを見ても、居酒屋のバイトや夜の仕事をしているのが当たり前でした」
給料が安すぎるから副業に走る
握手券やブロマイド、グッズなどの販売数によってインセンティブを設けている事務所もある。しかし、インセンティブとはいっても、よほどの行列でもできない限り収入は微々たるものだ。そのため、地下アイドルは自分のファンになってもらうため、グッズを買ってくれる太客を繋ぎとめるために、あの手この手と策を講じ、ついには禁じ手をとるしかなくなってしまうという。
「何度も通ってくれてSNSで相互フォロワーになっている人とは、直接、連絡を取り合い、コスプレ撮影に応じたり、自分が着ていた高校の制服を売ったこともありました。“DMは事務所が管理しています”というのは建前で、実際は一切監視されていませんでした。そんなところまで手間を割く余裕も、事務所にはなかったと思います」(前出の元地下アイドル)
パパ活、撮影モデル、さらには夜の仕事などに手を出す地下アイドルもいる。それは、手っ取り早く稼げて、時間の調整が利きやすいためだ。飲食店などのアルバイトの場合、シフトの融通が利かないため、レッスンやライブなどのスケジュールに柔軟に合わせるには、スキマ時間に高収入が得られるパパ活や夜の仕事は好都合なのである。
そのため、日頃からファンを誘惑する地下アイドルも多い。Instagramを見ると、際どい写真を大量に掲載し、「一緒に寝ない?」「デートしたいな」「好きになってね」などと煽り文句を書いている地下アイドルがいる。こうすることで、いわゆる“ガチ恋勢”を生み出せば、それだけ収入に直結するのだという。
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