もはや日常茶飯事な「地下アイドル」の活動休止トラブル…なぜファンと個人的に会ってしまうのか

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事務所に有利すぎる雇用条件

 前出の元地下アイドルは、給料が満足に与えられていないにもかかわらず、雇用条件が厳しすぎるのも問題と説く。

「ぶっちゃけ、恋愛禁止、ファンと会うのは禁止などの条件を課すのであれば、余計な副業をしなくても大丈夫なくらい給料を出していればいいんですよ。生活の心配をしなくて済むのですから。でも、そんな好待遇をとっている事務所は少ないですし、大手の芸能事務所でも十分な給料をもらっているとは聞きません。

 あまりに事務所に有利な雇用条件だと思います。ダンスや握手会、サイン会などは長時間にわたる肉体労働。しかも緊張感もあるので、かなりしんどいです。ぎっくり腰をやったときも事務所は治療費を出してくれませんでしたし、衣装が破れても直すお金がないので、私やメンバーが手縫いで直していました」

 地下アイドル本人に多大な負担を強いている実態は、言ってしまえばやりがい搾取に等しい。こうした構造が改善されない以上、地下アイドルの不祥事には終わりがないのではないか。何より、ファンと個別に会うことは事件に遭遇するリスクも大きい。事務所が形骸化し、地下アイドルを守っていないのが問題である。

VTuberなどとの競争も激化

 地下アイドルはグループ数が増加しすぎた結果、完全に飽和状態となっている。そのうえ、声優アイドルやVTuberなどの競争相手も多く、供給過多に陥っているのは間違いない。さらに、生成AIを使って美少女の動画を誰でも手軽に出力できるようになったことも、ファンの“地下アイドル離れ”に拍車をかけているといわれる。

 そのため、運営側も高額なグッズを販売したり、握手会でファンに対してハグを行わせたりと、少しでも収益に繋げようと必死である。しかし、アイドルがもはや夢を与える仕事ではなく、プチ水商売のような状況になっている状況は果たして健全なのだろうか。行き過ぎたサービス合戦の末に大きなトラブルが発生しないか、不安である。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部

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