第一印象は「あまり関わらないようにしようと…」 出会いから6年、再会した二人が夫婦になった理由

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この感情はどうしたらいいですか

 奈穂さんの思いは募ったが、養成所に入れば外部との連絡が制限されるため、入所までの約10日間に「二人の関係が進むことはないかな」と考えていた。

 だが、不要になった自転車など機材の扱いについて彼に連絡すると、5月8日に食事をすることに。その日は未来の夢や目標についてひたすら語り合った。

 真面目に語る藍道さんに彼女は「社会にもまれて大人になりましたね」。どちらが先輩か分からない言いようだが、彼に対する印象はさらに上向いた。

 日付も変わった頃、彼女は「この前の飲み会から気になってます」「もうすぐ入所だけど、この感情はどうしたらいいですか」と彼に問うた。今なのか、約10カ月の入所期間を待つのか。「付き合うなら今かなぁ」と彼は言うも、それに続く「付き合おう」の言葉が出てこない。「今まで自分から告白しては別れているから」というのが彼の明かした理由だった。それを聞いて奈穂さんから「付き合いましょう」と告げた。

結婚へ一直線

 練習用のロードバイクを藍道さんに整備してもらい、奈穂さんが跨ると今までになく前進した。食事から2日後の5月10日のことだ。

 感動して彼に電話で「今から一緒に乗らない?」と提案。埼玉県の彩湖で「もがく」(競輪用語で「全力疾走する」の意)デート。走り終えると立ち話で将来を語り合い、彼女の思いは早くも「この人と結婚するなぁ」と変わっていた。

 もはや結婚へ一直線。彼女が卒業後に所属する千葉県で藍道さんが家を探し、卒業翌日から同居を始めた。

 交際打診を彼女にさせたため「プロポーズは僕からしたい」と考えた藍道さん。25年7月29日、ドライブに出かけ、神奈川・山梨・静岡の三県境に近い三国峠で車を降り、ネックレスと共に手紙を渡した。奈穂さんが読み終えたところで、藍道さんが「続きを言うね。結婚してください」。

 二人は「自転車競技や自転車文化を広く普及させたい」との思いに溢れている。

 藍道さんいわく「欧州では世界三大スポーツに数えられるのに、日本ではまだマイナー。ヘルメットのかぶり方講座など、安全に楽しく自転車に乗れるところから広げたい」。自転車が結んだ愛なればこそ、自転車への愛を今後も貫く。

週刊新潮 2025年12月11日号掲載

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