高速バスを悩ます「相席ブロック」という難問…“キャンセル料金の値上げ”よりも効果的な対策を講じた業者に訊いてみた

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 一昔前の夜行バスといえば、主に若者が利用するイメージがあった。しかし、近年の物価高やインバウンド観光客の増加などに伴うホテル代の高騰により、利用者層の広がりが顕著になっている。移動と宿泊を兼ねることができ、到着地で早朝から行動できるのは大きなメリットで、ビジネスパーソンからも人気が高いという。

 そんな夜行バスを運行するバス会社を悩ませているのが、“相席ブロック”の問題である。夜行バスは2列×2列の4列シートを採用していることが多い。その場合は座席の幅も決して広くないうえ、長時間の移動で隣席に人がいると、疲労感が増しやすい。そこで、予約時に2席分を抑えておき、出発直前になってキャンセルする利用者がいるのだ。

 こうした行為を「相席ブロック」という。直前にキャンセルすれば隣の席が埋まることがほぼなく、2席分を1人で使えるので、広々と快適に移動できるというわけだ。しかし、結果的に1席分が売れ残り、損をしてしまうバス会社にとってはたまったものではない。以前から問題視されてきたが、対策が難しいといわれて久しい。【文・取材=山内貴範】

なぜ相席ブロックが起こるのか

 筆者は、遠方で早朝に取材がある際に夜行バスを利用することがあるが、相席ブロックと思わしき事例を何度か見たことがある。週末の東京~名古屋間・東京~大阪間などの混雑路線は、明らかにバスターミナルが混雑して利用者も多く、車内もほぼ満員だ。ところが、特定の乗客だけ通路側の席が空いたままになっていたのである。

 窓側に座る乗客は、最初から隣に誰も来ないとわかっているかのように、通路側の席に大きな荷物を置き始めた。筆者が夜間のトイレ休憩の際にチラ見すると、窓側の乗客が通路まで足を伸ばして心地よさそうに寝ていた。これだけで断定はできないものの、おそらく相席ブロックが行われた事例なのだろう。

 この夜行バスは安さがウリで、一般的な観光バスとほぼ同じ仕様だ。シートは固く、1人当たりの専有面積が狭くて窮屈である。身体が大きい人なら、隣に人がいるとしんどそうだ。女性の乗客は、隣に男性が来ることを不安に感じそうである。そして、夜行バスにはトイレの問題が付きまとう。トイレに立った時、隣人を起こしてしまう可能性もある。

 隣が空席なら、前述のような事態を避けることができる。多くのバス会社ではキャンセル手数料が数百円程度で、その程度の損(もしくは追加料金)で広々と過ごせることが、相席ブロックが横行してしまう原因となっている。しかし、繰り返すようだがバス会社にとってはたまらないし、違法でこそないものの、システムを悪用した限りなくグレーな手段ということができる。

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