大手アニメショップがグッズの買い取りを中止…推し活ブームで荒稼ぎ「ランダム商法」が“転売ヤーの温床”になる理由

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 東京の秋葉原や、大阪の日本橋に店舗を構える大手の中古アニメショップが、一部のアニメについて“グッズの買い取りも販売も行わない”とXに投稿して話題になった。そのアニメのタイトルは、「けいおん!」や、「ぼっち・ざ・ろっく!」「ガールズバンドクライ」などの人気作品であった。

 わざわざそういった告知を出した背景には、“推し活”ブームのなかでアニメグッズが発売され過ぎており、買い取りに持ち込まれる量が増加し、中古ショップが在庫超過になっている問題があるようだ。しかも、アニメ作品ごとのブームが終息するのも早いため、多くの中古ショップで在庫の山を築いている実態があるようだ。【文・取材=山内貴範】

量が多すぎるアクリルスタンドと缶バッジ

 20年前は一部のアニメショップでしか見かけなかったアニメグッズが、コンビニや100円ショップなど、どこでも見かけるようになった。なかでも定番になっているのが、アクリルスタンドと缶バッジだ。流行語大賞の候補にぬいぐるみを愛でる“ぬい活”が選ばれたが、それよりも品数が圧倒的に多いのが、アクリルスタンドと缶バッジである。

 アクリルスタンドとは、コロナ騒動の最中に飲食店などによく置かれていたアクリル板に、イラストをプリントした代物だ。これが現在のアニメショップの主力商品であり、手のひらサイズのものでも1000円、2000円台で売られ、大きいものなら1万円を超えるものも見かける。型を作る手間がかかるぬいぐるみやフィギュアと異なり、イラストのデータをプリントするだけで作れる手軽さもあって、爆発的に普及した。

 こうした商品を販売する際に多く見られるのが、“ランダム商法”である。特にライブやイベント会場で多い販売形態だが、キャラクターや声優、アイドルの姿をプリントした5種類くらいのグッズがランダムに封入され、全種類のコンプリートを目指すか、もしくは“推し”を引き当てるためには何個も買わないといけないというものだ。

 その過程でグッズがダブったり、“推し”ではないキャラクターを引き当ててしまったりするのが基本である。不要とされたグッズはファン同士でトレードされることもあるが、すぐさま中古ショップに持ち込まれるケースが後を絶たない。このようなランダム商法の蔓延が、中古ショップの在庫をだぶつかせる要因になっているのだ。

一瞬で人気が出るが、一瞬で飽きられる

 昨今、アニメの人気が高まり、そして衰退していく様子は、デイトレードやスイングトレードでよく使われる新興株の値動きを思わせる。何かの拍子にSNSでバズると急激に人気が上昇し、エンタメ系のニュースサイトはどんな記事を書いてもアクセス数が稼げるから、記者の感想やプレスリリースを使ったコタツ記事を大量に出す。わずか数日のうちに人気が頂点に達し、グッズが品薄になり、“覇権アニメ”などと呼ばれるようになる。

 ところが、そういった覇権アニメは、飽きられるのもまた、急激に早い。筆者はネットニュースに関わっているので良くわかるのだが、人気があるうちは、記者が一切取材していないしょうもない記事を書いても、アクセスランキングでトップになるほど読まれる。ところが、アニメが終わると1~2ヶ月も経たないうちに読まれなくなってしまうのだ。

 飽きられやすい理由は、新作アニメが過剰なほど供給されているためである。年間のテレビアニメの製作本数は300タイトルともいわれ、コンテンツの洪水のような状況だ。人気が出たアニメは2期が制作されることもあるが、アニメ会社も人材難でスケジュールがパンク状態であり、どうしても1~2年のブランクが生じる。よって、その間に飽きられてしまうのだ。

 1990年代のゴールデンタイムのアニメは、人気が出れば放送がずっと続き、50話、100話と制作された。今はどんな作品も原則、ワンクール12~13話までしか制作されず、人気が出たら2期が製作される流れになっている。そのため、メーカー側もかつてのようにじっくり腰を据えてグッズを作ることができないのである。

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