大手アニメショップがグッズの買い取りを中止…推し活ブームで荒稼ぎ「ランダム商法」が“転売ヤーの温床”になる理由

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1回2000円を超えるランダム商法も出現

 メーカーは人気に乗って、アクリルスタンドのように安く簡単に作れるグッズを展開して、一気に売り抜けようとする。万が一タイミングを誤れば大量の在庫を抱えてしまう、相当リスキーな商売となっているのだ。そういった手法で販売されて、飽きられたり、ダブったりしたグッズが中古ショップに流れているというわけである。中古ショップも同様に、早く売り切らないといけないので気が抜けない。

 商品が品薄になると、それに乗じて転売ヤー(転売屋)が出現し、SNSで「転売ヤーは許さない」「本当に欲しい人が買えるようにしてほしい」と騒ぎになる。ところが、数ヶ月後にはファンが別のコンテンツに移ってしまい、市場にはグッズが大量に放出され、見向きもされなくなることがままある。業者もそうなることをわかっているし、転売ヤー対策をしたらかえって利益を減らすリスクがあるため、積極的ではないのである。

 昨今、ランダム商法はますます盛んに、そして高額になっている。通常は1回500~800円、高くても1000円ほどが相場だったが、最近では2000円を超えるランダム商法も出現し、SNSでも「ぼったくり過ぎだ」と騒動になっている。2000円の商品が5種類あると、コンプリートするまでに最低でも1万円必要になる計算だ。

 こういったランダム商法が、転売ヤーを生み出す温床といわれる。“推し”だけが欲しい人は、一発で“推し”が出ればラッキーなのだが、出なければ延々と商品を買い続けなければいけない。1回2000円のランダム商法で、目当てのグッズがフリマサイトで3000円で売られていたら、1000円上乗せしても、確実に買えるほうを選ぶ人も少なくないはずだ。

アニメが単なる消費財になっている

 在庫過多の問題が起こっているのは中古ショップだけではない。新品のグッズを扱う店でも、アニメグッズの販売には頭を悩ませているようだ。ディスカウントショップに行けば、人気アニメのグッズが、「60%OFF!」のポップとともに大幅な値引きがなされている光景をよく見かける。著作権をもつ版元は巨額の利益を上げているが、小売店や問屋は在庫と格闘していると思われる。

 アニメが消費財のように扱われている一方で、アニメ制作の現場は激務に次ぐ激務である。アニメーターの人材育成が進んでおらず、ベテランのアニメーターには仕事が殺到している状況だ。しかも、グッズの売り上げは現場のアニメーターにはほとんど還元されていない状況が未だに続いている。巨額の利益を上げるのは一部の業者で、関係者の多くが疲弊している。これが3兆円産業ともいわれる日本のコンテンツビジネスの実態だ。

 高額なグッズを買わされるだけのファンも、本当に今のままで満足なのだろうか。かつて問題とされた新興宗教よりも、昨今の推し活の方が、遥かに金がかかるケースがある。ファンは推しに没入しているときなら、どんなに粗製乱造であってもグッズが供給されれば嬉しいのかもしれない。しかし、飽きてしまうと「いったいなぜ、自分はこんなグッズを買っていたんだろう……」と途方に暮れることも多いはずである。

 過度な商業主義が進んでいるコンテンツ市場を見ていると、推し活がQOLの向上に役立っているとはいえないのではないか、と感じてしまう。目先の利益ばかりを追求してきた業界の崩壊は、これまでたびたび起こってきた。グッズの乱発、信者ビジネス、ランダム商法を自重していかなければ、日本のコンテンツビジネスの未来は暗いのではないだろうか。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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