「えみりの目が見えなくなる」と告げられて…辺見マリが“拝み屋”に5億円つぎ込んだ「洗脳地獄」の生々しすぎる記憶
夕刊紙・日刊ゲンダイで数多くのインタビュー記事を執筆・担当し、現在も同紙で記事を手がけているコラムニストの峯田淳さんが俳優、歌手、タレント、芸人ら、第一線で活躍する有名人たちの“心の支え”になっている言葉、運命を変えた人との出会いを振り返る「人生を変えた『あの人』のひと言」。第45回は歌手の辺見マリさん。西郷輝彦さんとの結婚や娘・えみりさんとの思い出など、秘話が語られます。
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波乱万丈な人生
長い記者生活の中で、目が点になった強烈な芸能スキャンダルがいくつかある。女性なら二つ。
一つは形成外科で乳首の縮小手術をしたところ、手術が失敗したとして奈美悦子が訴えた「乳首喪失裁判」。今一つは、拝み屋に洗脳されて「5億円をだまし取られた」と語った辺見マリの壮絶体験である。
このうち、辺見のスキャンダルは本人から事の次第を詳しく聞くことでき、「きれいごとでは語り尽くせない半生を」というタイトルの連載が実現することになった。
実は当時、こちらは大ピンチだった。2016年の早い時期、ドリフターズの仲本工事の連載を始める予定で取材を終え、会社に戻ろうとして電車を降りた時に、携帯電話が鳴った。仲本本人からだった。
「今回の連載だけど、申し訳ない、事務所の都合でできなくなった」
スタートは2週間後に迫っていた。そんな短期間で次の連載の準備をできるわけがない。絶望的な気持ちで、まだ正式にOKをもらっていなかった辺見しかアテがなく、連絡したところすぐに取材対応してくれるという。「助かった!」という思いだった。
取材当日はライターと事務所に向かったが、休憩を挟んで長時間対応してくれたのは感謝の一言に尽きた。
辺見の拝み屋スキャンダルは「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日系)で語ったもので、03年に出した『もうひとつの経験』(青春出版社)が元になっている。拝み屋に振り回された13年間の出来事を包み隠さずに書いているが、そのあまりの衝撃的な内容に、放送終了後も話題になっていた。その話を改めて詳しく聞きたいと考え、お願いしたものだった。
拝み屋に5億円をだまし取られるより前、それまでの彼女の波乱に富んだ人生が伏線になっていることがわかる。
50年、京都生まれ。実の父はスペイン系アメリカ人の将校だった。父は2歳の頃に妻と幼児を残して帰国し、その後、母が再婚。辺見が実父のことや、ハーフであることを知ったのはデビュー前の17歳の時だった。育ての父は流しをやりながらレコードも出した歌手で、辺見は両親にお嬢様として大切に育てられたという。
中3でスカウトされ、69年に19歳でデビュー。第2弾シングル「経験」が人生を大きく変えた。
「♪やめてエ~ 愛してないなら」のフレーズで始まる、20歳前の娘が歌うとは思えない艶めかしい曲は80万枚の大ヒットに。辺見のイメージは後々まで「色っぽい女、強い女、野性味のある女」になったと、拝み屋に洗脳されている時に書いた著書『空白の1095日』(92年、廣済堂出版)で語っている。
絶頂期は72年、御三家の一人だった西郷輝彦との結婚だった。二児(ミュージシャンの辺見鑑孝、タレントの辺見えみり)を授かった。ところが、連載で語ったところによると、西郷の両親との折り合いが悪く、何時までも夫の帰りを待つ完璧主義な辺見の性格が原因で、夫婦仲も冷え込んだという。
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