「お米券は絶対に配りません」 高市総理に強烈異議の大阪・交野市長インタビュー 経費が高く、使い勝手も悪い…「石破政権の現金給付のほうがましだった」

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 11月21日、政府は約21兆円規模にも及ぶ総合経済対策を閣議決定した。その中でもクローズアップされているのが「おこめ券」の配布。政府は、地方自治体が自由に活用できる「重点支援地方交付金」を2兆円計上。その中で同券の配布が掲げられているのだ。米価が高止まりする中、家計の負担を少しでも抑えようとするのが狙いで、鈴木憲和農水相も一押しの政策であるが、実際の実務を担う地方自治体からは批判も相次いでいる。中でも、大阪府交野市の山本景市長が「交野市はお米券を配布しません」「鈴木農林水産大臣の露骨なお米券への誘導には屈しません」とXに投稿したことは大きな話題となった。その真意とは何か。本人に聞いてみた。
(以下は、「週刊新潮」編集部が2025年11月30日に行ったインタビューの収録です)

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恩恵が行き渡らない

 政府は、(総合経済対策の)物価高対策の柱の一つとして「重点支援地方交付金」の拡充を掲げています。交付金の使い道は自治体ごとに決められるはずなのですが、政府から示された資料には「食料品の物価高騰に対する特別加算」の具体例として、「プレミアム商品券」「電子クーポン」などと並び「いわゆるお米券」と書かれている。かなりお米券を押してはるんですよね。
 
 なので、交野市としては、お米券は絶対に配りませんよ、とXで発信しました。まずお米券とは、全国米穀販売事業協同組合が発行する「おこめ券」と、JA全農が発行する「おこめギフト券」の2種類があるのですが、どちらも1枚500円で440円分の米が購入できる、というもの。差額60円分は券の印刷代や流通経費、マージンなどに充てられるので、この段階で経費率は12%。さらにこの券を住民に郵送するとなると、名簿を作り、切手を貼るなどの作業が生じ、業者に委託することになる。とすると、経費率は20%程度まで上がってしまい、極めて効率が悪い。「プレミアム商品券」を配ったこともあるのですが、これも経費は20%程度かかった。券を配るという方法では、どうしても少なくない経費が発生し、その分の恩恵が住民に行き渡らなくなるわけです。

 一方で、住民の皆さんの銀行口座に現金を振り込む場合でも、経費率は10%ほどかかってしまう。実際に何かを配るよりは抑えられますけどね。

 しかし、市町村の場合、水道料金と下水道料金を徴収してますので、この基本料金を免除するという形で交付金を使うと、システムを改修する程度で実施できますので、ほとんど経費はかからない。かかっても、経費率1%とかそのぐらいで済む。

 この3つの方法で比較したら、3つ目の上下水道の基本料金を何か月か免除するのが最も効率が良いんです。

1キロ800円

 それと、わざわざお米券を配ってまで、これだけ価格の高止まりが続いているお米を買わせる必要があるのか、と。いま、スーパーでお米は1キロ800円前後で販売されてますが、小麦粉なら1キロ150~200円で買えます。交野市の場合、学校給食でもお米は2学期に入ってから週に3回から2回に減らしています。

 私の考えとしては、物価高対策をするとしても、その対策で生じたお金をどう使うかは市民の判断に委ねるのが適切だと思っています。お米券では、お米を買うことだけにほぼ使途が限定されてしまう。一方、上下水道の基本料金の免除は、極力経費がかからない上に、実質的に現金を配ってるのと変わらないので、市民の皆さんの使途が圧倒的に広がるのです。

 交野市の場合、住民には農家さんもいて、農家さんが「お米券」を貰ったところで、しゃあないですよね。人数は多くないですが、外国籍の方もいて(注:1%程度)、みんながみんなお米を食べるわけではない。そもそも日本人であってもお米を食べない人が増えているわけで、お米券をもらっても嬉しくない人もいるでしょう。その点、上下水道は住民の皆さんが利用しているので、皆さんに恩恵が行き渡りやすいと考えています。

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