大谷翔平「侍ジャパン」参戦表明も…ほかの「日本人メジャーリーガー」の動向がいまだ不透明な理由

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試合を決定づけるのはホームラン

 先のNPB関係者は「高を括っていたわけではないが」と言いつつも、反省の意味を込めてこうも語っていた。

「前大会(2023年)の決勝戦前後のことです。大谷をはじめ、出場してくれた日本人メジャーリーガーたちに『次回大会も出てくれるか?』と確認して回りました。大谷や佐々木だけではなく、吉田正尚(32)やラーズ・ヌートバー(28)らも二つ返事で快諾してくれました。口約束ではありましたが、26年大会は前大会ほど、日本人メジャーリーガーの招集には苦労しないと思ったのがそもそもの間違いでした」

 前任の栗山英樹氏(64)はシーズン中にも関わらず、メジャーリーグの球場を訪ね、選手に侍ジャパンの優勝のために日本人メジャーリーガーの協力が必要なことを説いてまわった。彼らも日の丸を背負って戦うという、ペナントレースとは異なる緊張感を楽しんでいた。だが、今回は大谷の参加表明に追随する日本人メジャーリーガーが躊躇っているような雰囲気だ。

「そもそも、井端監督は前大会のスコアを振り返り、準々決勝以降、試合を決定づけた得点はホームラン絡みだったことを指して、日本人メジャーリーガーのパワーと米国での経験値が必要だと捉えていました。大谷だけではなく、鈴木や吉田、ヌートバーがいて、NPBチームから招集する選手も活かせると考えてきたのです」(前出・同)

 投手編成にしても、日本人メジャーリーガーを中心に考えてきたそうだ。大谷、山本、今永らに先発を託し、阪神・村上頌樹(27)、才木浩人(27)、埼玉西武・今井達也(27)、日本ハム・伊藤大海(28)、オリックス・宮城大弥(24)らの国内組の投手をロングリリーフの「第2先発」のように起用する。

 だが、山本らが今大会を辞退することになれば、投手プランをゼロから作り直さなければならない。日本人メジャーリーガーの所属する米球団からの返答の遅延は、国内の代表候補たちにも悪影響をもたらすだろう。彼らもWBCに選ばれるかどうかでオフの調整の仕方が違ってくる。

 こうした日本人メジャーリーガーの返答遅延と前後して、こんな情報も聞かれるようになった。

「井端監督は、国内から中継ぎ専門の投手を多く選出したいとの意向をNPBスタッフに相談するようになりました。過去の大会では国内の先発投手、つまりNPB球団を代表するような有名投手やクローザーに試合中盤で投げてもらいましたが、今回は、中継ぎにキャリアを積み上げてきたリリーバーを多めに選出したいそうです」(前出・NPB関係者)

 中継ぎ専門のリリーバーは試合展開を読んで登板準備を開始する。先発投手の状況、次の対戦打者が右打ちか左打ちか、あるいは代打が誰かを予想して肩を作っている。また、味方野手の好プレーなどで状況が変われば、肩を温めていても登板ナシとなることもあるし、緊急でマウンドに行かなければならないケースもある。短期決戦のWBCで、こうしたタフネスさと、短時間で登板準備ができ、強いボールを投げられる中継ぎ専門投手の必要性が議論されるようになったそうだ。

「それも、左の中継ぎ投手が複数人いたら投手継投の選択肢が増えると話していました。投手は15人選出を基本線に考えています」(前出・同)

 中継ぎの専門投手を増やす構想は、「山本、今永らがしっかりと責任イニングを投げてくれる」のが大前提だ。しかし、複数の米メディアが「山本、佐々木のWBC選出が厳しい」と報じており、投手・大谷に関しても「WBCで長いイニングを投げさせるのは得策ではない」と伝えている。

カギを握るのは中継ぎ投手

 ドジャースを応援する専門メディア「Dodgers Nation」はこう伝えていた。

「当然だが、彼ら3人が休むほうが新しいシーズンに向けてはベストだ。我々の目標はワールドシリーズの3連覇だからだ。しかし、WBCへの選手派遣はドジャースにとって、とてつもなくセンシティブな問題になった。『出るな』とは説得しにくい。日本で『ドジャースが出場を拒んでいる』というネガティブな見出しが並ぶ懸念があり、それは絶対に避けなければならない。チームの広報面でも良くはない。長期契約を結んでいるので、WBCへの選手派遣は慎重に扱うテーマになっている。長期契約、高額年俸で日本人選手を抱えているチームはだいたい同じようなことを考えているのではないか」

 佐々木朗希に関して、ドジャースは今オフに先発再転向の方向でコンディション作りの宿題を出しているとされ、日本側のWBC招集に応じれば、佐々木の育成ビジョンを変更しなければならない。

 日本人メジャーリーガーたちが返事を遅らせた理由は「長期契約、高額年俸の重圧」を感じているからであって、大谷だけはWBC出場の思いを抑え切れなかったということかもしれない。

 侍ジャパンの連覇のカギは国内の中継ぎ投手が握っているようだ。

デイリー新潮編集部

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