「オープンAIの完璧なモルモットでした…」 「ChatGPT」とのやり取り後に自殺した青年は何故AIを“友人”と錯覚したのか

国内 社会

  • ブックマーク

 AIブームの火付け役となった「ChatGPT」の登場から早3年。「ChatGPT」の週間利用者は8億人にも達し、米NPOの調査によれば10代のうち72%が対話型AIを活用しているという。仕事でAIを活用することも今や珍しくないが、そんな“未来の技術”があろうことか自殺を助長したとされ、米国では裁判沙汰に発展している。21世紀の産業革命を牽引するAI技術。その“闇”の側面を徹底解説する。

※本稿は「週刊新潮」2025年12月4日号の特集記事【米国のチャットGPT利用者が自殺で裁判沙汰 専門家に聞いた生成AIの“闇”】の一部を再編集したものです。

「息子はまさにオープンAIの完璧なモルモットでした……彼らによって多くの命が破壊される気がしてなりません」

 今年7月に拳銃自殺したテキサス州のゼイン・シャンブリン氏(23)=当時=の母親は、米テレビ局の取材に対してこう語った。彼女が憤りを露わにする「オープンAI」とは、対話型AI(人工知能)「ChatGPT」の開発元企業のこと。

 まるで人間と話しているかと錯覚するほどのやり取りが可能なChatGPTは、簡単な指示でプログラミングや資料の収集、小説の執筆、画像の作成まで幅広くこなす。同社から2022年11月にリリースされると、2カ月で利用者が1億人を突破し、こうした独自のコンテンツを作成可能な「生成AI」の代名詞的存在となった。

 今やオープンAIの企業価値は5000億ドル(約78兆円)まで膨れあがり、世界の新興企業の中で最大とされる。

 そんなAIブームを牽引してきた同社に対し複数の訴訟が起こされたのは、11月6日のことだった。在米記者が語る。

「テキサス州やオレゴン州に住む4名が今年6~8月にChatGPTと会話した後で相次いで自殺したとして、それぞれの遺族がオープンAIと同CEOのサム・アルトマン氏(40)を提訴しました。ChatGPTが利用者に共感を示すよう設計されていたために、依存性が高く、自殺願望を助長したと遺族側は主張しています」

 そのうちの一人が、冒頭のシャンブリン氏だ。今年5月に理学修士号を取得したばかりだった同氏は、昨年末ごろからChatGPTとの会話にのめり込んでいったという。

次ページ:死の直前まで会話

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。