「クマ駆除」を担う新人ハンターが“命の危険”に晒される懸念も…「長野県中野市4人殺害事件」がカゲを落とす「ハーフライフル規制」とは

国内 社会

  • ブックマーク

「ハンターの担い手不足が加速する」との不安

 ハーフライフルはクマの駆除に“必要不可欠”な猟銃だった。ところが長野県中野市の殺人事件で凶器として使われてしまったため警察庁が規制強化に乗り出す。ハーフライフルを所持できる条件をライフル銃と同じレベルに厳格化する方針を打ち出したのだ。

 読売新聞オンラインは2023年12月21日、「手製銃・猟銃も『発射罪』対象に規制強化、銃刀法改正へ…ローン・オフェンダーの事件防止狙い」との記事を配信した。

 この記事で読売新聞は警察庁が銃刀法改正案を24年の通常国会に提出する方針を決めたと伝え、ハーフライフルに関して《所持許可の基準をライフル銃並みに厳しくする。ハーフライフル銃が長野の事件で使われたことを受けたものだ》と報じた。

「具体的には『散弾銃を10年間所持してきた』ハンターしかハーフライフルを持てないよう規制を強化したのです。つまりハンターになっても10年間はハーフライフルを使えないことになります。先に見たように、経験の浅いハンターこそハーフライフルとサボットスラグ弾が必要です。ところが、にもかかわらず10年選手しか持てないというのですから……。ハンターの危険性が高まれば、ただでさえ担い手不足が叫ばれる現状に拍車がかかりかねません」(同・関係者)

北海道猟友会の猛抗議

 この規制には多くの狩猟関係者から反対の声が上がった。中でも強く抗議したのは北海道の猟友会だった。2024年1月10日に声明文を発表したのだが、その要点をご紹介する。

▼問題の本質は使用した男性被告にあり、銃の種類ではない。

▼ハーフライフルの有効射程距離は150メートル。一方、散弾銃の射程距離は50メートルしかなく、ヒグマ猟に必要な距離を確保できない。極めて危険だ。

▼北海道の狩猟を始める者のほとんどはエゾシカの捕獲を目的としており、有効射程距離が150メートル程度あるハーフライフル銃とサボットスラグ弾を使用している。

▼法改正が行われると、北海道ではエゾシカやヒグマの狩猟、有害鳥獣捕獲の担い手が不足する深刻な事態に襲われる。

 現場を熟知する北海道猟友会の訴えは、国に届いたのだろうか──。

 第2回【クマ駆除に暗雲の「ハーフライフル規制」に北海道では“特例”が出たが…ほかの地域では「そもそも銃でクマを駆除できるハンターが少ない」「若手の後継者もいない」現実】では、ハンター不足の問題は全国共通でも、ハーフライフルなど具体的な懸念事項は地域によって異なるという難しい現状をお伝えする──。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。