初対面の女性と、子供の頃から知る近所のおじさんを…2011年「堺市連続強殺」、無慈悲な手口の事件が「死刑議論」に変わるまで
もう1つの強盗殺人
Aさんの事件が動きを見せたのは、西口宗宏(50=当時)が別件で逮捕された12月6日のことだった。社会部記者は当時の「週刊新潮」にこう語っている。
〈「同じ市内で11月初めに行方不明となったB子さんの銀行口座から5万円を引き出しました。ATMの防犯カメラに西口らしき男の姿が映っていたし、B子さんがいなくなった百貨店のカメラにもその姿が残っていました」〉(「週刊新潮」2011年12月22日号)
逮捕された西口はB子さん事件の供述を始めた。最終的に判明した事件の詳細は痛ましいものだ。11月4日、ショッピングセンターの駐車場で目を付けたB子さんを拉致し、Aさんと同じく顔にラップフィルムを巻く方法で殺害。遺体はドラム缶で骨になるまで焼かれた。すべての目当ては現金とキャッシュカードである。
しかも、次に殺害したAさんは、西口を子供のころから「ぼく」と呼んで可愛がっていた“近所のやさしいおじさん”だった。再び社会部記者の話。
〈「Aさん宅の向かいに8年前まで住んでいて駐車場も借りていた。また、Aさんの犬を散歩させたり、小遣いをもらうなど、かなり親しい付き合いをしていました」〉(同)
自宅放火で服役、仮出所中に犯行
西口は比較的裕福な家に生まれ育ったが、社会人となってからは事業の失敗が続いた。それでも高級外車を乗り回し、家族に高級ブランドを買い与えるなど金遣いが荒く、多額の借金を抱えていたという。
Aさん宅の向かいに「事件の8年前まで」住んでいた理由は、保険金目当てで自宅に放火したからだった。その罪で服役し、仮釈放中にAさんとB子さんの強盗殺人を起こしたのである。古い友人を名乗る人物は当時の「週刊新潮」こう語っていた。
〈「前の奥さんとは駆け落ちまでして一緒になったのに、7年前、保険金目当てに自宅に火をつけて刑務所行きだよ。前に肉親の保険金が入ったことがあったらしく、それで味を占めたのかねえ。で、半年前(編集部注:実際は4カ月前)に(刑務所から)出てきたばかりだった」〉(「週刊新潮」2011年12月22日号)
西口は一審と二審で死刑判決を受け、2019年2月12日、最高裁の上告棄却により死刑が確定した。一方、この裁判は一審から「死刑制度の是非」が争点となったことでも注目されていた。
死刑問題をテーマとしたノンフィクション『死刑のある国で生きる』(宮下洋一著、新潮社)には、AさんとB子さんの遺族が語った西口の裁判、被告側弁護士が持ち出した「死刑制度の是非」に覚えた違和感、死刑に対する考えなどが丹念に綴られている。そこに浮かび上がるのは、家族を奪われた埋めがたい喪失感、そして混沌とし続ける感情である。
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