優勝「安青錦」は「横綱戦に自信を持っている」…大関昇進でも存在する“弱点”と必要な稽古とは【音羽山親方の九州場所総括】
2021年3月場所で現役を引退し、2年後の12月に東京都墨田区内に音羽山部屋を創設した71代横綱・鶴竜こと、音羽山親方。現在は、前頭・霧島(元大関)を筆頭に、10人の弟子の指導にあたっている。今年春場所から審判部に異動し、本場所中は毎日勝負審判として土俵下で厳しい目を光らせている親方に、「1年納めの九州場所」の土俵をあらためて振り返ってもらった。【武田葉月/ノンフィクションライター】
【写真】電車の中で笑顔…「日本で力士に」と来日した安青錦、初土俵の頃に見せた気さくな表情
豊昇龍・安青錦の決定戦を予想していた
――九州場所は、前半戦から横綱・大の里関が白星を重ねて、優勝戦線を引っ張る展開。ところが、10日目、11日目に連敗し、2敗の横綱・豊昇龍関と並び、さらには、関脇・安青錦関も2敗をキープしていることから、優勝の行方は3力士で争われることになりました。まさに混戦の中、千秋楽に大の里関がまさかの休場。安青錦関が大関・琴櫻関に勝てば、豊昇龍関との優勝決定戦がおこなわれるという、スリリングな展開になりましたね!
音羽山親方:「大の里休場」の報せを受けた時は、私も本当に驚きましたね!
豊昇龍は不戦勝での白星で3敗をキープすることになりましたが、安青錦は大関に勝って、必ずや豊昇龍との決定戦になると予想していました。
豊昇龍と安青錦は、九州場所14日目に対戦があって、押し出しで安青錦が勝っています。秋場所、名古屋場所でも安青錦が制している。要するに、安青錦は横綱戦に自信を持っているんです。私は優勝決定戦を審判部の控え室で見ていましたが、仕切りの間中、横綱のほうが落ち着きがないように見えたくらいです。
何よりも安青錦自身が成長している
――3敗同士の優勝決定戦では、安青錦関が送り投げで横綱を破り、初優勝。九州場所は「安青錦にとって大関昇進の足場固めの場所」と言われていましたが、12勝3敗の優勝で大関昇進のライン(3場所で33勝以上)もクリア。この時点で、大関昇進が当確になりました。
音羽山:3場所中1場所が平幕での星だったため、「大関昇進への足場固め」などと称されていましたが、前回の「総括」で私が言ったように、12勝くらい挙げれば大関に昇進させてもいいと思っていました。だけど、そこに「優勝」まで付いてきちゃったんだから、すごい! のひと言ですね!(笑)
新関脇で迎えた九州場所前は、「今度こそ、壁に当たるんじゃないか?」などと見る向きもありましたが、それよりも何よりも、安青錦自身が成長しています。相手が研究してくる以上に対戦する力士を研究して、対策を練って、白星をもぎ取っています。そうすると、「イケるじゃん」「強いじゃん」と、自信がついてくるものなのです。
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