「クマ被害」を防ぐ意外な“奥の手”…カギを握るのは「放棄された果樹」の伐採 「クマを人里に寄せつけずに共存できれば」

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放棄果樹の伐採に取り組む

――小川さんが行っている活動について、詳しく教えてください。

小川:私たち「クマボラ」は、コロナが流行しはじめた2020年頃に組織しました。NPO法人の「EnVision環境保全事務所」、札幌市の三者で連携しながら、市街地へのヒグマの侵入を防ぐために活動しています。その代表的な活動が、放棄果樹の伐採です。

 クマが木登りした際、体毛が樹皮に引っかかることがあります。それを採取してDNAを分析したところ、ある果樹園には5頭のクマが入れ替わり立ち代わりやってきていることがわかりました。夜間に交通量がある国道を横切り、サクランボを食べて帰っていく。それならば、放棄果樹を伐採すべきだと3者で話がまとまり、実施に移したのです。

――果樹の伐採はどのようなプロセスで行うのでしょうか。

小川:札幌市役所にはヒグマ対策を行う部署があり、職員が観光農園や、果樹を作っている農家を調べています。そんな農家にEnVisionが1軒ずつ問い合わせて、伐採の合意を得ます。そして、我々がボランティアに参加してくれる方を集めて伐採を行う流れです。もちろん、許可も得ずに伐採することはありません。

所有者不明の果樹の場合は

――所有者がわかっていない果樹の場合は、どうすればいいのでしょうか。

小川:どんな空き家であっても敷地内の果樹は勝手に伐採できないため、所有者不明のまま残っているものをどうするのかは、最大の課題です。また、何十年も守ってきた果樹を伐ることを嫌がる人も、当然ながらいます。こうした事例は札幌では少数なのですが、丁寧に対応していきたいと考えています。

 なお、現在も営業中の果樹園は、周囲を電気柵で固めて、ヒグマの侵入を防ぐ対策を行っています。

――現在、クマボラにはどのくらいのスタッフがいるのですか。

小川:登録しているボランティアは100人くらい。チェンソーを使えるなど、樹木の伐採に慣れている人がたくさんいます。クマが出て困っている人たちにも賛同してもらえるよう、輪を広げるよう努力しているところです。放棄果樹だけでなく、営業している果樹園や、川の周りの草刈りをして、ヒグマが隠れる場所をなくすようにしています。

 幸いにも、我々の活動で、ヒグマの目撃情報は明らかに減っているといわれています。少なくとも、札幌では、市街地や住宅地でヒグマに襲われた人は、今年は1人です。札幌は森林と住宅が接している地域が多く、もともとヒグマに遭遇しやすい環境ですから、今後も地道に取り組んでいきたいと考えています。

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