サザンオールスターズのデビュー曲に「面白い、こういうユーモアが大事なんだよ」…“稀代の作詞家”が語った「絵空事」のリアリティ
曲作りの拠り所
〈絵空事は意外に真実にぶつかるもので、嘘だ、嘘だ、嘘っぱちだと歌っているうちに、真実がドンと居座る力を持っている。それもまたリアリティである〉(前掲書)
阿久が『愛すべき名歌たち』で取り上げた自身の曲は「また逢う日まで」「あの鐘を鳴らすのはあなた」「宇宙戦艦ヤマト」「時の過ぎゆくままに」「北の宿から」「ペッパー警部」「津軽海峡・冬景色」「サウスポー」「舟唄」など。演歌の名曲からポップなものまでバラエティに富んでいる。
ところで阿久は、曲作りの際、何を拠りどころにしていたのか。チャコはこんな風に説明した。
「詞、楽曲は時代の『飢え』、つまり『飢餓感』をキャッチすることから生まれる。『今はこういうものがない』とか『こういうものを聴きたい、歌いたい』と感じることが必ずあるはずなんです…」
「飢え」についてのヒントは、この言葉ではないだろうか。
〈青春は泣いて育つ。辛い思いをするということではない。感じることをいう。純に感じたり、熱く響いたりすると、涙が出る。そういう涙なら魅惑の貯金となるのだ〉(同)
阿久は、感受性と遊び心で歌謡界を駆け抜けた巨匠だった。どの言葉も感慨深い。
[3/3ページ]

