「栄光のバックホーム」元阪神・横田慎太郎さん、今も語り継がれる野球人生

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神様も本当に見ているんだな

「よりによって一番見えにくい打球」にもかかわらず、横田さんはまるで誰かに背中を押されたように前進すると、ワンバウンドでキャッチ、本塁めがけて左腕を目いっぱい振って送球すると、ボールはノーバウンドで捕手・片山雄哉のミットに収まり、二塁走者はタッチアウトになった。

「鳥肌が立ちました。プロ生活6年目の最後に、生涯ベストプレーを見せることができたのです」(自著『奇跡のバックホーム』幻冬舎文庫)。

 試合後、チームの先輩・鳥谷敬から「神様も本当に見ているんだな」と声をかけられた。横田さんも「あのプレーは、何か別の力が働いていたとしか思えません」と野球の神様の存在を意識した。

 その後、横田さんはがんが再発、再々発する苦境にあって、「自分の経験を伝えることで力になりたい」と「諦めない心」を演題に講演会活動を続けた。

 そして、2023年4月からホスピスでの療養生活に入り、同年7月18日に他界したが、生涯を野球に捧げた魂は、今でも多くの人々の心の中で生き続けている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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