クロちゃんと盲目芸人の共演がなぜ“神回”に? 「水ダウ」がバラエティの枠を超えて感動を与えた理由
必死で意思疎通
盲目の芸人と声が出せない状態の芸人が対面して、必死で意思疎通を図る姿は、人間の根源的なコミュニケーション欲求を描き出しているようだった。ヘレン・ケラーの伝記に書かれているような状況がそのまま再現されていた。
それが大反響を巻き起こしたもう一つの理由は、彼らが芸人として有能だったからだ。それぞれが全力で目の前の人に向き合い、意思を伝えようとしていた。濱田は礼儀正しく振る舞い、言葉で的確に状況を説明したり心情を語ったりしながら、鋭いツッコミも見せていた。クロちゃんは、「クロちゃんさん」というふうに名前に「さん付け」をしてほしくないという謎のこだわりを発揮して、濱田をあきれさせていた。それぞれの芸人としての持ち味が見事に発揮されていたからこそ、視聴者に感動と共にさわやかな笑いの余韻を残していた。
濱田は2018年にピン芸日本一を決める「R-1ぐらんぷり」で優勝を果たしている実力派芸人である。自分自身の障害のこともネタにする漫談を得意としている。
ただ、その実力の割に、彼は全国ネットのバラエティ番組ではこれまであまり活躍の場を与えられていなかった。それは、テレビの作り手側が彼のような障害のあるタレントをどのように扱えばいいのかわかっていない、ということが大きかったと考えられる。
今回の企画では、濱田はクロちゃんと前向きにコミュニケーションを取ろうとした上で、ところどころで的確なツッコミをいれて笑いを取ったりもしていた。その頭の回転の速さには多くの視聴者が驚いていた。この企画は彼にとって大きな転機となる可能性がある。
クロちゃんと濱田祐太郎という2人の芸人のやり取りは、バラエティ番組の枠を超えて、多くの人々に感動と気付きを与える貴重な場面となったのである。
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