吉瀬美智子(50)の「恋愛現役」宣言にモヤモヤしてしまう理由 アラフォー・アラフィフ女優に吹く「生々しさ」の逆風
SNS時代の「生活丸見え」問題と「母」「女」「女優」の三つのバランスの難しさ
そもそもシングルマザーの恋愛が「応援されにくい」最大の理由は、視聴者の見ている部分が昔より圧倒的に「生活に近い」からだ。SNSの普及で、プライベートが想像以上にダイレクトに伝わり、「母であること」が可視化されやすくなっている。その結果、「母としての姿」を見慣れた視聴者は、「女としての姿」を見せられた時に、過剰に反応やすくなっているのではないだろうか。
母子家庭というだけで、本来余計なお世話であるはずの「母としての自覚」を一般視聴者が勝手にジャッジする。吉瀬が「モテない」とこぼした時の冷めた女性視聴者の反応には、「幼い娘さんが2人いるのに、まだそんなことにうつつを抜かしてるの?」という驚きがあり、「でもあなたはもう十分恵まれているじゃない」という心の声も隠れていることだろう。見た目は上品、中身はざっくばらん、という吉瀬さんの思い描いていたギャップ売りには至らず、「なんかイメージよりも幼い、かまってちゃんな人」という落胆につながってしまっている。
吉瀬美智子、長谷川京子、新山千春らに共通するのは、「母」と「女」と「女優」の三つの顔を一人で抱えるブランド経営の難しさだ。特に、彼女たちは長年積み上げた「上質」「清潔感」「ミステリアス」などのイメージ資産を持つ。そのイメージに対して、バラエティーで砕ける姿や恋愛発言が唐突に挿入されると、視聴者の認知負荷が一気に増して「なんか違う」と感じさせてしまうのだ。
もちろん、彼女たちは本来もっと自由でいい。恋愛をするのも、お酒を楽しむのも、色気を前面に出すのも自由だ。しかし芸能界はイメージで成り立つ世界であり、視聴者が「生活者目線」で見るようになった今、そのイメージ運用は難易度が跳ね上がっている。
最近の視聴者は「人間味」には寛容だが、「リアル過ぎる人間味」には驚くほどシビアだ。酔い姿も恋愛宣言も、演出として出すなら歓迎されるが、素のまま出すと途端に「距離が近過ぎて生々しい」と引かれやすい。吉瀬さんが直面した反応も、まさにこの「リアルのコントロール」が以前より繊細になったことの表れだろう。
シングルマザーの恋愛に対する反応が「応援」から「困惑」へと変わったのは、彼女たちが変わったのではなく、視聴者側の「見え過ぎる時代」が変えてしまったからだ。恋をすれば祝福され、ほろ酔いでふにゃふにゃと体を揺らす姿を「かわいい」と言われた時代はもう終わった。しかし、だからこそ熟年シングルマザータレントたちの堂々たる「恋愛現役」宣言には、一定の覚悟が問われる。若々しい美貌を保ち続け、娘との良好な関係性もアピールしながら、「現役」の気迫を打ち出さなくてはならない。吉瀬さんの「現役」トークも、「ロック」ではなく「水割り」くらいの薄め具合で出してくれる方が、視聴者にはちょうど飲みやすかったりして。





