“止まらない円安”を前に金融関係者が注目する「高市首相の発言」…識者は「実質的な為替レートは1ドル=270円」「すでに50年前と同水準」と試算
技術は世界トップでも活用は苦手
「今の日本が何よりも取り組むべきは労働生産性の向上です。インフレは『モノの流通が充分ではなく、カネが余っている』ことからも起きます。そのため今の物価高対策として有効なのは『モノの生産量を増やす』ことです。この問題を考える際、私たちが国会で見る光景は象徴的だと言えるでしょう。国会議員の全員が紙にプリントされた資料を使って議論しています。資料を作り、それをプリントアウトし、人数分のコピーを取り、ホッチキスでとめ、仕分けして配る……こうした昭和の時代そのままの作業の積み重ねが労働生産性の上昇を阻んでいるのです。国会議員がPDF化した資料をタブレットで見るようにすれば、政党や国会の職員や官庁の官僚は他の仕事に従事できますから労働生産性が上がります。そうした無駄な仕事をデジタル化を進めて日本中の職場からなくすだけでも労働生産性の向上が期待できるのです」(同・田代氏)
先日、田代氏はシンガポールのチャンギ国際空港を利用した。その際、出入国管理がパスポートではなく顔認証で行っていることを知った。
正確に言えば、チャンギ国際空港は目の光彩を使って本人確認を行っている。この結果、手続きは10秒程度に短縮され、必要な職員の数は劇的に減っている。
「まさに最新のテクノロジーが労働生産性を著しく向上させる実例を目の当たりにしました。そして皮肉なことにチャンギ国際空港の顔認証システムには日本の技術がたくさん使われているのです。日本は技術が世界トップクラスであるにもかかわらず、それを活用して労働生産性を向上させることを怠っています。こうした現状を一刻も早く改善する必要があるのは言うまでもないでしょう」(同・田代氏)
高市政権が誕生して円安が加速したのは事実だが、何事にも“前段”が存在する。円安の花を咲かせてしまったのは高市首相かもしれないが、種をまいた人物がいなければ花が開くことはない。
そして円安の種をまいたのは、安倍晋三氏と黒田東彦氏の2人だという。第1回【「高市政権」支持率70%超でも…なぜ「円安」が急激に加速するのか 「1ドル=160円」が現実味を帯びる理由】では、アベノミクスの「異次元緩和」が今の歴史的な円安の遠因となったことなどについて詳細に報じている──
註:ドル円レートは三菱UFJ銀行の「外国為替相場チャート表」より
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