“止まらない円安”を前に金融関係者が注目する「高市首相の発言」…識者は「実質的な為替レートは1ドル=270円」「すでに50年前と同水準」と試算

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 第1回【「高市政権」支持率70%超でも…なぜ「円安」が急激に加速するのか 「1ドル=160円」が現実味を帯びる理由】からの続き──。2023年4月9日、植田和男氏が日銀総裁に就任した。翌日、ドル円の為替レートは1ドル132・6円だった。11月25日現在、レートは156円台で推移しており、どれだけ円安が進んでしまったか改めて実感できる。(全2回の第2回)

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 前任の黒田東彦総裁は「金融の異次元緩和」を掲げ、市場に円を大量に流し込む金融政策を採った。だが植田総裁に代わった日本銀行は2024年3月19日、金融政策決定会合で、11年にわたる大規模な金融緩和策を終えると決めた。

 インフィニティ合同会社チーフ・エコノミスト兼テラ・ネクサスCEOの田代秀敏氏は「植田さんが日銀総裁として大規模な金融緩和を終えると発表してから約半年後、高市さんが日銀に批判的な発言を行って注目を集めました」と言う。

「植田さんは『ゼロ金利との戦い』という書籍を2005年に出版された経済学者です。2023年4月に日銀総裁に就任すると、金融関係者は『異次元緩和は終わる』、『金利は上がる』と受け止めました。ところが24年8月になると当時の岸田文雄首相が自民党総裁選への不出馬を発表します。9月12日に総裁選が告示され、高市さんは立候補しました。その際、日銀の金融政策に関して『金利を今、上げるのはアホやと思う』との見解を示したのです。高市さんは植田さんを牽制した格好になり、これに金融関係者が注目しました」

 為替市場に“積極財政論者”と認定されていた高市氏は今年10月21日、首班指名選挙で第104代首相に選出された。そして物価高対策に“有言実行”で踏み切る。

トルコ・リラでも円安

 経済・物価高対策は当初、17兆円規模と報じられていた。ところが11月21日の臨時閣議で減税分などを加えた規模は21・3兆円と決定した。

「基本的に流通量の多い商品は価格が安くなり、流通量の少ない商品は価格が高くなります。通貨も同じです。高市さんのように積極的な財政出動を行うと政府から円が流れ出しますから、円の流通量が増えて円安基調になります。円を持っている投資家は高市政権の経済政策に『これでは自分が持っている円は価値が下がる一方だ』と判断し、円を売り始めています。問題なのは単にドル、ユーロ、人民元といった主要通貨に対して安くなるだけではなく、アルゼンチン・ペソと並ぶ“弱い通貨”であるトルコ・リラに対しても円は安くなっており、まさに『全面安』の様相を呈していることです」(同・田代氏)

 11月13日は1ドル154・4円だったのが一気に上昇し、11月20日には157・5円に達した。

 どんどん円安が進んで私たちは不安を感じているわけだが、このように新聞やテレビで「1ドル154・0円」とか「1ドル157・3円」などと報じられるドル円の為替レートは「名目為替レート」と経済学では呼ばれている。

 この「名目為替レート」だけを熱心にチェックしても、円安が日本経済に与える影響を正確に測れないことがあるという。

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