「何も間違ったことを言っていない」が高市首相の本音 安倍政権のブレーンが軟着陸を模索中か
存立危機事態
高市早苗首相の「台湾有事」を巡る国会答弁に過剰な反応を繰り返す中国。南アフリカで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では日中両首相の接触はなかった。高市氏がいま何を考えているのか考察し、さらには今後の展開について触れる。
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これまでの経緯を振り返っておこう。
高市氏は7日の衆院予算委員会で、中国による台湾の海上封鎖が発生した場合、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁。台湾有事は日本が集団的自衛権(他国の防衛のために武力を行使すること)を行使できうる状況にあると認めたことになる。
存立危機事態は安全保障関連法(2015年)で新たに導入された言葉。日本が外国から直接の攻撃にさらされていなくても、日本と密接な関係にある他国が攻撃され、これにより日本の存立(国民の生命、自由、幸福追求の権利など)が脅かされる明白な危険がある状態を指す。
岡田氏もビックリ
これまでの政府答弁は「個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなる」といったもので、台湾有事が存立危機事態に該当するかの判断については明確にせず、”曖昧路線”を取ってきた。
「高市発言」はいつものように中国の反発を呼び、大阪に駐在する中国の薛剣・総領事がSNSで《勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない》などと発信したのを皮切りに、「日本への渡航を当面自粛」「日本産水産物の輸入は、安全性を証明する追加資料の提出があるまで再開せず(事実上の停止措置)」などといった言葉が並んだ。
高市氏はその後も発言の撤回や取り消しに応じていない。
「高市発言は中国以外にも各方面に影響を及ぼしており、例えば質問に立った立憲民主党の岡田克也元外相側にSNSを中心に“なんであんな質問をするんだ”“政権の足を引っ張るな”などといった批判が多くみられます。反発の強さに岡田氏もビックリしているとのことです。岡田氏はこの件で各メディアの取材を受けて、彼なりの真意を説明していますが、それで批判が沈静化することはなく、むしろ盛り上がっている状況です」
と、政治部デスク。
熱狂的な支持者を失わない着地
そもそも高市発言は武力行使を公言したわけではなく、野党側の「仮の話」につきあって「可能性」を示したに過ぎない。
「高市氏に間違ったことを言ったという認識は全くありませんが、この件について周辺に語ることを避けているのが現状です。憶測で報じられたくないとの思いからでしょう。今井尚哉内閣官房参与を中心に事後処理を進めているところで、高市氏の熱狂的な支持者を“失わない着地”を模索しているということです。今井氏は安倍元首相のもとで政務秘書官を務め、ブレーンとして高く評価されてきた人物。高市氏自身が官邸入りを熱望したわけですが、早速その手腕が試される局面になっていると言えるでしょう。ただ、高市氏が何か間違ったことを言ったわけではないので日本側からこれまで以上の釈明や説明を行うことは基本的になく、中国もメンツを重視する分、問題は長期化する可能性もあります」(同)
今回のG20で日中両首相の接触はなく、日本が次の議長国となり、早期開催を目指す日中韓による首脳会談について、中国側は参加拒否の姿勢を示している。中国の王毅外相(兼共産党政治局員)は、高市発言について「日本の現職の指導者が台湾問題へ武力介入しようとするという誤ったシグナルを公の場で発し、言うべきではないことを言った」「レッドラインを越えてしまった」などと批判した。
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