「知らないアイドルばかり」の紅白をアラフォー以上はどう楽しめばいい? 「見る」のではなく、「読み解いて遊ぶ」方法
14日、大みそかの「第76回NHK紅白歌合戦」の出場者37組が発表された。出場者を見て「知らないアイドルばかり」となってしまったというライターの冨士海ネコ氏。そんな人が紅白を楽しむ方法とは……。
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もう若くないと自分で分かってはいても、他人から突き付けられるとツラい。それははやりの音楽にちっとも心躍らない時に感じさせられる。満を持して発表された「第76回NHK紅白歌合戦」出場者リストを見てもいまひとつ気分が盛り上がらないのは、年を取ったせいか、それともわたしのセンスがないせいなのか……。
今年の初出場はFRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、HANA、M!LKなど、日本を拠点に活動するアイドルが中心。昨年はK-POP勢が初出場枠を総なめし、「ここはどこの国の年末番組?」という疑問すら生じたが、今回は明確な「日本アイドル回帰」が打ち出されたといえる。
この変化は単なる国籍至上主義という問題ではないはずだ。昨年のK-POP祭りを巡る「偏り過ぎでは?」という声や、「紅白の意義は何なのか」という根本的な疑問に対して、NHKが「国民的番組」としての立て直しを図った結果なのだろう。
そして二つの国民的アイドルも大きな変化を迎えた。Perfumeは「コールドスリープ宣言」=2025年末での活動休止を発表。嵐も5人そろってのファンクラブ生配信を行い、「もしかして紅白にも出る?」と世間をざわつかせた。日本アイドル界そのものが変化の真っただ中にあり、それが丸ごと紅白のステージに投影されようとしている。
ただし、この「日本回帰」は表向きのテーマに過ぎない。本質的には、紅白が評価軸を「音楽」から「バズ」へ大きく動かした転換点であることは明白である。
それは初出場の顔触れを見れば明らかだ。TikTokなど短尺動画で「振り付けが使われるかどうか」が、今の紅白出場の一番確実な試金石になっている。CD購入文化は終わり、サブスクも飽和した今、楽曲のセールスではなくTikTokやYouTube Shortsでの「バズ」が第一。サブスクの再生数はバズによって底上げされ、ライブ動員もSNSでの「拡散力」で決まる時代。「SNS上で誰もが知っている」状態を作った者勝ち、という新しいルールが適用され始めたのだ。「偉大なるマンネリ」といわれて久しいNHKも、視聴率を取るためには「瞬間最大風速の強い人材」を拾うしかなくなっている。
おそらくわたしのような中年世代が、引っかかるのはここなのだ。紅白はもともと、幅広い年代が同じ曲を共有する「国民的な年越し番組」だったのに、と。加えて音楽ファンからは、「もはや紅白は曲の良し悪しではなく、バズり合戦だ」という嫌みも聞かれている。
でも今は、視聴者の好みがアルゴリズムによって徹底的に細分化され、「全員が知る曲」を作ることがほぼ不可能になってしまっている。そのため、NHKは毎年のように「後出しの特別枠」「サプライズゲスト」を大量投入しなければ、世間の注目をつなぎ留められない。
ではわたしのような「知らないアイドルばかりで楽しめないのでは?」という視聴者は、どんなふうに紅白を楽しめばいいのだろうか?
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