コメ価格「5キロ4316円」で最高値を更新…「おこめ券」が解決につながらない根本的な理由 コメ農家が危機感をあらわにする「2文字」とは

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価格高騰が続く可能性

 ならば、コメ高騰と消費者の悲鳴をコメの生産現場はどう受け止めているのだろうか。

 コメの価格が上がれば、基本的にコメ農家の収入は増える。だが高騰してしまうと消費者のコメ離れが進み、“顧客”の数は減ってしまう──。

 木村和也氏は登山専門誌「山と溪谷」で知られる出版社・山と溪谷社のOBだ。生まれ育った新潟県南魚沼市にUターンすると実家のコメ農家を継ぎ、フリーペーパー「山歩みち」の編集長を務めている。

 消費者の心理もコメ農家の本音も熟知する木村氏は「これほどコメ価格が高騰した原因は、日本におけるコメの“絶対生産量”が少ないからです」と言う。

「短期的なスパンならコメ価格は上昇するだけでなく下落する可能性もあります。価格が上下動を繰り返しながら、いわゆる“適正価格”を市場メカニズムが決めるのかもしれません。ただし長期的な視野に立てば立つほど、コメの生産量が増えなければ、コメの価格は下がらないでしょう。だからこそ鈴木憲和・農水相は『増産は価格の下落を招く』と指摘したのだと思います。そして日本の農業が変わらなければ、今後もコメの価格が高止りする可能性はあっても、消費者が歓迎するほど価格が下がる要素はなかなか見いだせません」

離農増加で生産量は減少

 鈴木農水相はコメ価格の高騰に対して「おこめ券で国民のコメ購入を支援する」と意欲を見せている。だが、抜本的な解決につながらないのは明らかだ。

 木村氏が根本的な問題として指摘するのが、「離農」の2文字だ。実際、全国の農村ではいまも離農が相次いでいる。コメの生産者が減れば生産量は減る。生産量が減ればコメの価格は上がる。

「平坦な耕地の少ない地域を『中山間地域』と呼びます。古来、日本の農家は『日本に生きる人を養う』という想いでコメを作ってきた一面もあったと思います。コメ価格の下落が続いても、『先祖伝来の田んぼを守る』、『一族郎党のためのコメを作る』と考え、田圃の面積が狭い中山間地域でもコメの栽培を続けてきました。しかし、もう限界です。農家の高齢化、農薬や肥料の高騰などにより、離農が相次いでいます。私が営農している新潟県南魚沼市は典型的な中山間地域ですが、この25年で水稲の耕作面積は1割減りました。1ヘクタール未満の田んぼで営農する農家に至っては4割が離農したのです」

 民放キー局の情報番組では、「離農の増加でコメ農家が減るのなら、大規模化を進めればいい」と主張するコメンテーターも目立つ。

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