期待のドラ1「森木大智」と「風間球打」が早くもクビ 高卒選手をわずか数年で戦力外にするケースが目立つ…スカウトからは苦言も

スポーツ 野球

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データが全てではないが…

 森木、風間と同学年の選手をみると、高校から育成選手として入団した福島蓮と柳川大晟(ともに日本ハム)が早々に支配下登録され、一軍で大きな戦力となった。ドラフト指名時の評価が短期間でひっくり返るのも珍しいことではないと言えるだろう。

 その一方で、このような“見切りの早さ”に対して懸念の声が聞かれる。ある球団のアマチュア選手を担当するスカウトはこう話す。

「こちらとしては入団する時に選手に対して期待の言葉をかけますが、数年でクビになってしまうと、その選手を担当したスカウトはやはり辛いですよね。実際、選手が本当に能力的に厳しかったケースは仕方ないですが、すべてをデータや数字で判断できるものではありません。アマチュアの選手を見ても、右肩上がりで成長する選手は少なく、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら成長していく選手がほとんどです。数年で結果が出ないから、あまりに早く見切ってしまうのはどうかと思います」

 高卒でプロ入りして戦力外になったが、その後、才能を開花させた選手がいる。

 ソフトバンクで中継ぎ投手として活躍する藤井皓哉は、おかやま山陽を経て、2014年のドラフト4位で広島に入団し6年間プレーしたが、結果が出ずに自由契約となり退団した。その後、独立リーグ・四国アイランドリーグの高知ファイティングドッグスに移籍して才能を開花させ、わずか1年でソフトバンクに入団している。

 一方、今年の社会人野球の日本選手権で優勝したヤマハで打線の中軸を担う網谷圭将は、千葉英和を経て、2015年ドラフト会議でDeNAから育成1位で指名されて入団したものの、3年間で結果が出ずに戦力外通告を受けた。退団後、ヤマハに入社してから打撃が開花した。昨年はソフトバンクから育成契約ながらも好条件でオファーがあったという。球団の見切りが早く、選手の潜在能力を信じ切れなかったことが悔やまれる。大成する機会を逃した選手は他にもいるはずだ。

 もちろんプロ入りした選手全員が中心選手になれるわけではないが、できるだけ多くの選手がその才能を腐らせることなく開花させるような環境を野球界全体で整えていくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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