期待のドラ1「森木大智」と「風間球打」が早くもクビ 高卒選手をわずか数年で戦力外にするケースが目立つ…スカウトからは苦言も
10月23日に行われたドラフト会議では支配下で73人、育成で43人の合計116人が指名された。来季からまた新たなプロ野球選手が誕生するが、その一方で野球人生の岐路に立たされている選手も少なくない。11月12日には、自由契約となった選手が現役続行を目指すための「12球団合同トライアウト」が行われ、38人が参加した。今年、特に目立つ点が、ドラフト会議で上位指名を受けながら、わずか数年の在籍で自由契約となったケースだ。【西尾典文/野球ライター】
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ドラフト上位入団の弊害も
その代表例は、森木大智(前阪神)と風間球打(前ソフトバンク)である。森木は、高知中学時代にスピードが出にくいと言われる軟式球で150キロをマークした“スーパー中学生”だった。高知高では甲子園への出場はできなかったが、早くから「世代トップクラス」と言われていた本格派右腕である。
一方、風間は明桜時代の3年夏に甲子園に出場。1回戦の帯広農戦は、10三振を奪って2失点完投勝利をあげた。続く2回戦の明徳義塾戦では大会最速の152キロを記録して大きな話題になった。
ともに2021年のドラフト1位で入団。しかし、森木は1年目に一軍デビューを果たしたものの、その後はフォームを崩して低迷。風間も一度も一軍へ昇格できず、4年目の今シーズンオフに自由契約になった。彼らは今年の大学4年生と同じ学年に当たり、これほど早く戦力外通告を受けたことに野球ファンから驚きの声が出た。
「以前は、短期間で戦力外になる選手といえば、私生活や素行に問題のある選手でした。今でも同じような例はあると思いますけど、真面目な選手でも数年で戦力外になってしまうケースも増えていますね。その理由は、どの球団も投球に関するデータをとるようになった影響で、選手の能力をより正確に把握できるようになったことが大きいと考えられます。投手であれば、球速だけではなく、回転数や回転軸をはじめ、リリースポイントや球種ごとの変化量、制球力といった様々なデータが取れるようになりました。野手でいえば、打球速度や走力はもちろんどの位置に打球を飛ばせるかといった打球方向の傾向やどんな球種に強いのか、さらにはスイングスピードや打球の角度まですぐにわかります。最近は、プロ野球とアマチュア野球の差が広がっており、即戦力で活躍できる選手はほとんどいません。そうなると、プロに入った後、いかに成長できるかが重要になってきます。数年経過してもレベルアップができなければ、いくら若くても成長が見込めないと判断されてしまいますね」(セ・リーグ球団の編成担当者)
昔は高校生であれば最低でも5年はプロで鍛えるという考え方が多く、選手によっては入団後10年近く経過してから一軍に定着する選手もいた。しかし、あらゆるプレーがデータで分かるようになったことで、そこまで待たずに選手を見切るのが一般的になっていると言えそうだ。
さらに、選手にとってプロ野球の世界が厳しい環境になっている理由があるという。前出の編成担当者はこう続ける。
「最近は、ソフトバンクのようにファームの施設を充実させつつ、多くの育成選手を抱えて、支配下を目指して競争させる方針をとる球団が増えています。こうした選手のなかには、アマチュア時代に評価が低くても、プロの環境に入って一気に伸びる選手もいる。1~2年プロで練習を積んだだけで、同期のドラフト上位で指名された選手を追い抜いていくこともありますね。そうなると、ドラフト会議で上位指名されて入団した選手は多額の契約金をもらいながら、プロで活躍する期待が大きかったため、上手くいかないと周囲の目が厳しくなります。アマチュア時代にスター選手扱いされていた選手は挫折に弱いことがあるし、自分の予想以上に高いドラフト順位で指名され、入団後にプレッシャーに押しつぶされることもある。ドラフト上位で入団するのも良いことばかりではないのかもしれません」
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