「喉から手が出るほど銃が欲しい」 被告人質問スタート「山上徹也」が手紙に綴っていた“心の底” 「統一教会との因縁は私の一生を歪ませた」

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 奈良地裁で開かれている安倍晋三元首相銃撃事件の公判。11月20日の第10回公判から、いよいよ山上徹也被告(45)の被告人質問がスタートした。事件後、彼が公の場で口を開くのはもちろん初めてのことである。母親がのめり込んだ旧統一教会への信仰の影響で家族に何が起こったのか。そしてなぜ安倍元首相に凶弾を放ったのか。12月4日の第14回公判まで計5回行われる被告人質問の場で、その答えの一端が明らかになるだろう。

「週刊新潮」では事件直後の2022年7月、彼のTwitter(現・X)や手紙、また、山上被告の親族などに取材し、彼の“心の底”を分析している。彼が抱えた“闇”とは果たして何だったのか。以下、それを再録し、公判で表に出てくる彼自身の証言を理解するための一助としよう。

【前後編の前編】

(「週刊新潮」2022年7月28日号記事を一部編集の上、再録しました。文中の年齢、役職等は当時のものです)

 ***

「今は少し落ち着いてきたけど、まだ今後のことは考えられない。まずは、安倍さんのご家族、親族の方々に謝罪したい。私の至らなさで……」

 事件から9日後の7月17日の朝、山上徹也容疑者の母親は親しい統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関係者に、電話でこう打ち明けていたという。彼女が打ち砕いてしまった息子の人生。彼が行動を起こすにあたり、触発された映画があった。

 事件から3年前、愛知県常滑市の国際展示場から自宅に帰る道すがら、山上容疑者の脳裏には時折、前々日に観たその映画のシーンが、断片的に浮かんでは消えていたことだろう。

教会トップの暗殺は失敗

 その日、2019年10月6日は、統一教会の信者にとって特別な一日だった。

 教祖文鮮明亡き後、信者たちが「真のお母様」と崇める教団のトップ・韓鶴子(79)。彼女が、日本の信者の前に姿を見せる日だったのである。

 絶対に殺す――。山上容疑者は固い決意と共に、荷物に火炎瓶を忍ばせて、イベント会場に入ろうとした。だが、

「部外者は会場に入場できず、この時、山上容疑者は計画を断念しています」(捜査関係者)

 あの映画の主人公みたいにはなれなかった……。失意は深かったに違いない。

 後に彼はTwitterにこう書きつけている。

〈オレがJOKERを観たのは鶴子がやって来る前日、名古屋でだった。〉(20年8月12日)

 国際展示場でのイベント前日の5日、韓は名古屋市内のホテルに米下院議員や自民党議員たちを招き「ジャパン・サミット」を開いている。

 その前の日、つまり19年10月4日は映画「ジョーカー」が日米同時公開となった初日だったのである。

〈ジョーカーは何故ジョーカーに変貌したのか。何に絶望したのか。何を笑うのか。〉(20年1月26日)

「ジョーカー」は、特殊な疾病を抱えた男が、社会の底辺から這い上がろうとするも、心折れ、社会へ復讐する悪役・ジョーカーになり、世上を騒乱の渦に陥れる物語である。

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