「喉から手が出るほど銃が欲しい」 被告人質問スタート「山上徹也」が手紙に綴っていた“心の底” 「統一教会との因縁は私の一生を歪ませた」

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夫の死亡保険も寄付

 手紙を受け取ったルポライター、米本和広氏が語る。

「山上容疑者の犯罪は許されることではないですけど、家庭環境を考えると、その苦しみは理解できます。実際、統一教会によって家庭が崩壊してしまうケースは多いですから」

 事件の背景には母親の統一教会への入信がある。山上容疑者の伯父によると、入信のきっかけは二つ。一つは、父親が1984年12月に自殺したことだ。

「翌年2月に妹が生まれたのですが、彼女は父親の顔を知りません」(伯父)

 加えて、山上容疑者の兄が6歳の時に小児がんになったことも、母親を信仰の道へと駆り立てた。

「長男は7歳で抗がん剤を投与され、その翌年には頭蓋骨を開ける手術まで行っています」(同)

 信仰は家族を一切顧みないものだった。

「統一教会は母親の入信時期を98年だと発表していますが、あれは間違い。本当は91年です。入会時に、2千万円を献金してますよ」(同)

 3年以内に母親は合計で6千万円を教会に寄付。原資は主に夫の死亡保険金だった。

 山上容疑者は手紙の続きでこう訴えている。

〈世界中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、その現実化に手段も結果も問わない自称現人神。

 私はそのような人間、それを現実に神と崇める集団、それが存在する社会、それらを「人類の恥」と書きましたが、今もそれは変わりません。〉

親族にも献金を求め…

 実際、統一教会はあの手この手で金を吸い上げた。その一つが母親も参加したという“霊肉界祝福式”だ。

「寡婦が死別した伴侶と祝福(結婚式)に臨む儀式で、参加するに当たり、教会からは多額の献金を要求されます」(宗教ジャーナリスト)

 また母親は、伯父に教会への献金を乞うてもいた。

「“献金してくれ”と母親に言われてな。入信を勧められたわけではなく、お金だけ払うよう勧められたんや。“私の霊や夫の霊を慰めなさい”って。4代前までの霊を治めるために1回40万円払えって理屈です」(前出・伯父)

 山上容疑者自身もTwitterで、

〈オレが14歳の時、家族は破綻を迎えた。統一教会の本分は、家族に家族から窃盗・横領・特殊詐欺で巻き上げさせたアガリを全て上納させることだ。70を超えてバブル崩壊に苦しむ祖父は母に怒り狂った、いや絶望したと言う方が正しい。包丁を持ち出したの(ママ)その時だ。〉(20年1月26日)

 と、統一教会によって、一家が苦境に立たされていった様子をつづっている。

 ***
 
 その後、山上被告は、県下の名門校に進学する。一方で、母の信仰はエスカレート。さらに献金に拍車がかかることになった。【後編】では、兄の自殺などその後の山上被告に襲いかかった不幸と、今公判でも法廷に立った母や妹の、事件直後の肉声などを紹介する。

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