米国で本格化する「AI失業」、有名テック企業が抱える「巨額の借金」…AIバブル崩壊の足音と「トランプ政権の窮地」

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テック企業の「大荷物」はデータセンター

 だが、米国でもAI相場の過熱に警鐘を鳴らす論調が増えている。その代表格は、リーマンショックの際の「世紀の空売り」で知られる米著名投資家マイケル・バーリ氏だ。バーリ氏は10月末からAI銘柄について懐疑的な投稿を続けている。

 こうしたセンチメントの悪化の背景にはテック企業の経営戦略の変化がある。テック企業が得意としていたソフトウエア開発は大がかりな設備を必要としなかったが、AIビジネスはデータセンターという情報の「工場」が欠かせない。このため、テック企業は「持たざる経営」からの転換を余儀なくされ、巨額の借金を抱えるようになっている。

 直近では、米テック大手メタとオラクル、アルファベットの3社が、9月以降に合計655億ドル(約10兆円)の資金を中長期債(満期は40~50年)で調達したことが話題を呼んだ。経済データサービスのQUICK FactSetによれば、世界のテック企業約1300社の有利子負債の合計は約1兆3500億ドル(約200兆円、6月末時点)と10年前の約4倍に膨らんでいる。

 投資回収の期間が短いことも難点だ。ドットコムブームの光ファイバーケーブルなどと異なり、AIに欠かせない画像処理半導体(GPU)の耐用年数は5年程度だからだ。

AI投資に消極的だったアップルに注目

 投資に見合う利益を短期間に生み出すことができなければ、巨額の不良債権が発生してしまうというわけだ。そうした懸念は既に現実になりつつある。

 RBCキャピタルマーケッツは6日、AIサービスに料金を支払う企業が最近減少しているとの調査結果を明らかにした。投資資金の回収は容易ではない状況だ。

 巨額の資金調達が災いして、前述のオラクルの信用リスクは3年ぶりの高水準となっている。同社が発行する社債に売り圧力がかかり、発行体の信用リスクを表すデリバティブ(クレジット・デフォルト・スワップ)も高騰している。

 皮肉なことに、AI投資に消極的だったアップルの評価が見直されている。AI投資に関する多額の債務を負っておらず、手元資金が潤沢だというのがその理由だ。

 全米で建設が進むデータセンターについても批判が出始めた。データセンターが大量の水を必要とするため、生活用水が逼迫するという心配が広がっている。

 データセンターの弊害はまだある。AIブームの中心地であるカリフォルニア州では電気料金が高騰しているほか、データセンターから排出される化学物質で地域の環境が損なわれるとの指摘もある。

 AI投資は米国経済を下支えしてきたが、これが反転する事態となれば、リセッション(景気後退)入りは現実味を増すだろう。AIバブルが崩壊すれば、トランプ政権はさらなる打撃を被ってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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