「就活で内定をもらえたのに単位が足りなくて卒業できない…」 就職氷河期世代がうなされ続ける“悪夢”を、令和の若者は見ないのか

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自分にとってのトラウマ

 こうして夢の中の私は打ちひしがれるわけだが、尿意を感じて朝の5時30分に目が覚める。そこでホッとするのだ。

「オレは今、この家にいる。隣には妻が寝ている。つまり、オレは大学を卒業し、内定先の会社に入り、そして今、52歳の男としてこの場にいる。オレはキチンと単位を取れたのだ!」

 まったくもって意味不明の夢なのだが、それだけ就職活動というものは自分にとってトラウマになっていたのだろう。なにせ、「御社の社風に共感しました!」やら「私はサークルの副幹事として、活躍しました!」みたいな美辞麗句を言わなくてはいけないのか……。いや、オレは本心を言いたい……、的な葛藤を面接の度に経験するような苦行だったのだから。

 少なくない数の方々が「私も同じような夢を見る」ということは、皆さん同様の気持ちを持っていたのだろう。しかしながら、この夢から覚めるとホッとする。あぁ、もう就活をしないでいいんだ! 一応52歳まで貧困に喘ぐことなく生きられたんだ! と。

 巷では、「若い方が楽しい」という風潮があるが、正直私はもう10代・20代・30代の経験はしたくない。人生はツラいんだよ! ヘンな話になってくるが「人間は死ぬために生きている」ということを日々思っている。穏やかに死ぬため、学業に励み、就職活動をし、仕事を頑張る。とにかく人生は苦行の連続である。

 そうしたことが分かっているからこそ、この「大学4年生、内定獲得後に単位取得のためにキャンパスを彷徨う」という夢が時々現れるのだろう。恐らくこれからもこの悪夢は私を襲うことになると感じている。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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