“日給400億円”!? イーロン・マスクが世界初の「1兆ドル男」になるために課された“12の条件”とは
11月6日に開かれた米電気自動車大手テスラの年次株主総会において、CEOであるイーロン・マスク氏(54)に対する巨額の報酬プランが承認された。全12段階に設定された目標を達成するたびに増額される報酬は最大で1兆ドル(約153兆円)に及ぶという。仮にすべての目標を達成した場合、1日に得られる額は日本円で400億円を超えるというから、スケールが違いすぎて理解が追い付かないが、なぜこのような巨額の報酬プランが策定されたのだろうか。マネックス証券の岡元兵八郎氏の最新レポートをお届けする。
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【写真を見る】イーロン・マスクに課された12のマイルストーン【図解】
目標達成で約60兆円の純資産が3倍以上に?
1970年代にアメリカで放送された人気テレビドラマ「The Six Million Dollar Man(600万ドルの男)」をご存じでしょうか。NASA(アメリカ航空宇宙局)のテストパイロットである主人公が事故で重傷を負い、米国政府により600万ドルという巨額を投じられサイボーグとして再生されるという物語です。バイオニック(人工生体)技術によって超人的な力と俊敏さを得た彼は、国家の極秘任務に挑みます。
それからおよそ半世紀が経ち、アメリカに新たな“超人”が現れました。その名は――テスラCEO、イーロン・マスク。
テスラは先週の株主総会で、マスク氏の業績連動型報酬プランを75%超の賛成票で承認しました。このプランは、マスク氏に対して発行済み株式の最大12%に相当する新株、つまり総額約1兆ドル(約153兆円)規模の株式報酬を、最長10年にわたり付与するという前代未聞の内容です。
フォーブス誌によれば、2025年半ば時点でマスク氏の純資産はおよそ4000億ドル(約61兆円)に達しており、すでに常人の想像を超える富を築いています。したがって今回の報酬パッケージは、その莫大な資産をさらに倍増させる可能性を秘めた、まさに異例の挑戦となります。
もちろん、条件は容易ではありません。挑戦者マスクにふさわしく、テスラの「時価総額」「業績」「経営マイルストーンの達成」など、極めて厳格な要件が設定されており、さらにCEOとしての継続的なリーダーシップも義務づけられています。
では、マスク氏が「1兆ドルの男」となるためには、何を達成しなければならないのでしょうか。
マスク氏が報酬獲得に必要な12段階のマイルストーン
このプランでは、「12の時価総額マイルストーン」と「12の業績マイルストーン」が設けられています。テスラがこれらのうち1つの業績目標と1つの時価総額目標を同時に達成するごとに、マスク氏には発行済み株式の1%分が付与される仕組みです。言い換えれば、12組すべてを達成したとき、マスク氏は理論上、1兆ドルに到達しうる報酬を手にすることになります。
たとえば第1マイルストーンをクリアし、発行済み株式の1%が付与されるには、「時価総額2兆ドル」を達成することが条件となります。
加えて、「累計車両納入台数2000万台」、「アクティブFSD(完全自動運転)加入者数1000万人超え」、「ロボットの納入台数100万台」、「ロボタクシー(自動運転タクシー)の商業運行数100万台超え」という、4つの目標のうちの1つを実行しなければなりません。
また、第2マイルストーンの条件をクリアし、さらに1%の株式を付与されるためには、「時価総額2.5兆ドル」を達成するのと同時に、4つの目標のうちさらにもう1つを実行することが必要です。
最終段階の第12マイルストーンでは、「調整後EBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)4000億ドル超」および「時価総額8.5兆ドル」を実現しなければなりません。
加えて、最終の2つのマイルストーンの獲得には、マスク氏とテスラ取締役会によるCEO後継者計画の策定も条件となっています。
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