“日給400億円”!? イーロン・マスクが世界初の「1兆ドル男」になるために課された“12の条件”とは
目標達成の確率はどれぐらい?
このEBITDA目標は連続する4四半期で達成すればよく、暦年単位である必要はありません。取得済みの株式については議決権を行使できますが、完全権利確定までには継続勤務要件が課されています。
しかしながら、もしこれらの目標を1つも満たせなかった場合、逆に「マスク氏の報酬はゼロ」という、非常に厳しい条件にもなっています。
ただ、マスク氏は2018年1月に初の報酬プランを設定して以降、今回の提案が発表される直前までにテスラ株を約1350%上昇させました。これは同期間のS&P500の上昇率(約130%)をはるかに上回る驚異的な成果であり、彼の経営力を改めて証明する実績です。
もし今回の報酬プランに則り、時価総額が8.5兆ドルまで増えるとすると、ここからテスラの株価は6倍になる計算になります。(発行済み株数が変わらないものとする)
私の個人的な見方では、これまでのテスラ社のトラックレコードを考えると、時価総額の3兆ドル達成(株価2倍)と、4つの目標のうち3つについては達成可能ではないかと考えています。
具体的には、「累計車両納入台数の2000万台達成」、「アクティブFSD(完全自動運転)加入者の1000万人超え」、「ロボタクシーの商業運行台数100万台突破」の3つです。
その理由は、上に挙げた3つはいずれもすでに事業として動き出しており、進捗の方向性が明確だからです。イーロン・マスク氏のこれまでのトラックレコード(実績)を考慮すれば、これらの目標達成は「実現できるかどうか」が論点ではなく、「いつ実現するか」という時間の問題だと見ています。
一方で、「ロボットの納入台数を100万台超」という目標については、現時点ではまだロボット事業が研究・開発段階にあり、生産が本格的に始まっていないことを踏まえると、最も不確実性の高い要素になると考えます。
「運転中に眠れるレベル」の自動運転が可能に?
一方で、今年前半にはマスク氏が政治活動やワシントンでの発言に注力し、テスラ本業への関与が薄れているのではないかとの懸念も株主の間で広がっていました。だからこそ今回の極めて野心的で、かつ実現不可能とは言い切れない報酬プランは、マスク氏が再びテスラの事業に全力を注ぐ決意を示すものとして注目されています。
果たして彼はこの壮大な挑戦を成し遂げるのか――。テスラの株主たちは、固唾をのんでその行方を見守っています。
さらにマスク氏は株主総会で、テスラの自動運転技術FSD(完全自動運転)が日々進化しており、現在のバージョン14から14.3に更新されると、「運転中に眠れるレベル」の自動運転が可能になる見通しを示しました。ついに、本当の意味での自動運転社会が現実味を帯びてきています。
同時にテスラは、人型ロボット「オプティマス」の開発にも注力しています。マスク氏は今回、オプティマス第3世代の生産を2026年に開始し、第4世代を2027年、第5世代をその翌年に立ち上げる計画を再確認しました。同社はカリフォルニア州フリーモント工場で年間100万体規模の生産ラインを設け、テキサスでは年間1000万体規模の生産体制を構築する構想を明らかにしました。マスク氏はさらに「将来的には年間1億体、さらには10億体の生産を目指す」と非常に楽観的な見方を述べています。
もし、このような展開が本当に起きるとするならば、テスラの企業価値をこれまでとは異次元の水準へと押し上げる可能性が高くなります。
また、オプティマスが100万体規模の量産段階に入れば、製造原価は1体あたり約2万ドル程度になる可能性があるとされます。一家に一台、ロボットが働く時代――そんな未来が、いよいよ現実のものとなりつつあります。
かつて政府が600万ドルを投じて人間を強化した時代から半世紀。今度は、一人の起業家が1兆ドルの報酬と引き換えに、人類の未来そのものを変えようとしているのです。
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