トランプ氏の「30万円バラマキ政策」は奏功するか 新しい“邪悪な敵”NY市長の「民主社会主義」が大化けする可能性

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バラマキ政策で挽回狙うトランプ氏

 11月4日の一連の地方選挙で民主党が圧勝したことを受け、トランプ大統領は巻き返しに躍起になっている感がある。

 トランプ氏は9日、政権の看板政策である高関税の収入を財源に、高所得者を除くすべての国民に1人当たり2000ドル(約30万円)を配布する考えを明らかにした。連邦最高裁判所で関税の適法性をめぐる訴訟が進む中、自身の政策に対する正当性を強調することで世論戦に打って出た形だ。

 トランプ氏は5日、地方選挙の敗北について、政府機関の閉鎖が原因との見方を示していた。政府機関の閉鎖は米国経済に大きな打撃をもたらしている。

 米ミシガン大学が発表した11月の消費者態度指数(速報値)は50.3と、前月の確報値(53.6)から3.3ポイント低下し、4カ月連続で前月比マイナスとなった。インフレ率が約9%だった2022年6月以来、3年5カ月ぶりの低水準だ。政府機関の閉鎖の長期化が消費者心理に悪影響を及ぼしていることが主な要因だ。

 ホワイトハウスのハッセント国家経済会議(NEC)委員長は9日、政府機関の閉鎖が長引けば、第4四半期の経済成長率はマイナスになる可能性があるとの認識を示した。

止まらないインフレ

 だが、共和党にとっての最大の逆風は、生活費の上昇が一向に止まらないことだ。

 トランプ氏は「インフレなど起きていない」と強弁しているが、事実は異なる。公式統計によれば、米国の食料品価格は今年9月までの12カ月間で2.7%上昇した。コーヒーは19%、牛ひき肉は13%、バナナは7%それぞれ値上がりするなど、一部の品目で急上昇が見られる。

 電気料金もうなぎ上りだ。米エネルギー情報局(EIA)の最新統計で、今年8月時点の一般家庭向け電気料金の平均は1キロワット時あたり17.62セントと、1月の15.94セントから上昇している。

 インフレ率は、バイデン政権時代ほど深刻ではないが、国民が満足できる水準に下がったわけではない。

 このままの状態が続けば、バイデン氏と同じ轍を踏むとの指摘が出ている。そこでトランプ氏は、インフレの一因である高関税の恩恵を強調したのだろうが、効果の程は定かではない。

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