マニラ日本人2人射殺事件で警視庁が「マル暴刑事」を現地に派遣した理由 黒幕に「九州の反社勢力説」も浮上
現地カジノの遊興費は「銀行送金」
現地では、被害者の2人もただの“日本人旅行客”ではなかった可能性が指摘されている。
「フィリピン当局は、一人について刺青を背負っていたと明かしています。奪われたバッグにはカジノ資金4000万円が入金されている『通帳』が入っていた。2人は2カ月に一度くらいのペースでマニラのカジノを利用するハイローラー客で、カジノからは現金ではなく、銀行送金でやり取りできる便宜を図ってもらっていた」
では、いったい「黒幕」は誰なのか。そしてどういう理由で2人を消そうと考えたのか。
「フィリピン・日本両当局ともに犯罪収益の分配をめぐってトラブルが起きたとみている。犯行は2カ月前から綿密に練られ、関与した関係者は10人以上いると。フィリピン当局は押収した兄の携帯電話に黒幕につながる日本人の写真が入っていることも確認。警視庁は捜査員を派遣し、現地で押収物や防犯カメラ映像などの映像の提供を受け、黒幕の摘発につなげる構えです。界隈では、『九州を拠点とする暴力団関係者が関与したのでは』といった情報も出回っています」
フィリピンの邦字紙で記者活動していた経験を持つノンフィクションライターの水谷竹秀氏は「1990年代くらいからマニラは日本人犯罪者の巣窟になっていた」と語る。
「日本でフィリピンパブが営業するようになり、ブローカーなどが出入りするようになったことがきっかけと思われます。フィリピンは日本と違い、警察も入国管理局も買収しやすく犯罪者が活動しやすい。銃の入手も容易く、日本人をターゲットとした保険金殺人の舞台にもなってきた。現地から遠隔で詐欺や強盗事件を繰り返していたルフィグループやJPドラゴンという日本人反社グループが組織だって活動するようになったのも、フィリピン当局の監視が緩かったことが温床としてあります」
ただし、ルフィグループ摘発後は日本人犯罪者への締め付けが厳しくなったのではと語る。
「今年に入り、JPドラゴンのメンバーが20人近く摘発され日本に送還されている。フィリピンの捜査当局が真面目に仕事をしている印象を受けます。ただし、当局の腐敗体質そのものが変わっているとは思えないので、今後も日本の反社勢力が目を盗んで出入りする可能性はあります。実際、今回もルフィ事件であれだけ騒がれた後で発生しています」
警視庁は黒幕の逮捕まで漕ぎ着けることはできるのか。今後の捜査に注目したい。












