「財務省の提示を差し戻し…」 今井尚哉氏とのタッグで始動した高市政権、異例ずくめの官邸人事の意外な裏側とは【霞が関インサイド】
80%を上回る高い支持率のお出迎えで、華々しいスタートを切っている高市政権である。その中枢を担う官邸人事には、“異例の選出”が相次いだ。安倍晋三元首相時代の政務秘書官、今井尚哉氏とのタッグで始動した「チーム早苗」の裏側では一体、何が起こっていたのか。(桜井燈/ジャーナリスト)
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高市早苗首相が率いる首相官邸のスタッフ「チーム早苗」がまずは上々のスタートを切った。トランプ大統領の訪日などの外交日程をこなし、国会の施政方針演説と代表質問を乗り切った。ガソリンの旧暫定税率を年末に廃止することも与野党で合意した。
今後は自身が力を入れる新たな成長戦略の策定を急ぎ、その裏付けとなる大規模な補正予算を編成して具体化を進める構えだ。
霞が関の官庁街では「高市首相は就任前にかなり準備していたようだ。秘書官や閣僚に矢継ぎ早に指示を出している」との見方が広がっている。
サプライズ人事となった飯田祐二政務秘書官
電光石火の始動は各省庁にも緊張感を与えている。
特に石破茂前政権は霞が関に対する具体的な指示がほぼなく、野党との政策協議に追われる日常だった。石破前首相は筆頭の政務秘書官に防衛省出身者を起用したが、「各省庁の動かし方を分かっていなかった」(経済官庁幹部)とされる。極めて高い内閣支持率で発進した高市政権が国民の人気を維持するためには具体的な成果が問われる。
高市首相は自民党総裁選で勝利した直後、秘書官人事を巡って安倍晋三元首相の下で政務秘書官を長年務めた今井尚哉氏に相談した。今井氏は同じ経済産業省出身で今年7月まで事務次官を務め、その後、内閣官房参与に就いた飯田祐二氏を推薦し、高市氏は筆頭の政務秘書官として起用した。
高市氏は総務相を長く務めており、かねて霞が関では「高市首相の政務秘書官は総務省から起用されるだろう」と予想されていた。ところが今井氏の推薦で飯田氏が政務秘書官に抜擢されたため、霞が関には驚きが走った。
経産省と官邸の二人三脚
官邸関係者によると高市首相は当初、今井氏本人に政策秘書官に就くように求めたという。だが、今井氏に年齢を理由に固辞され、同氏が推薦した飯田氏の起用を決めたようだ。
ただ、今井氏の行政手腕を高く評価していた高市首相は、今井氏にも官邸入りを重ねて要望し、飯田氏に代わって内閣官房参与に就く人事が決まったという。経産省関係者は「同じエネルギー畑出身の今井氏と飯田氏は師弟関係にある。いわば飯田氏の後見役として今井氏が控え、霞が関全体に対する睨みを利かせる構図となった」と見ている。
その飯田氏は、岸田文雄政権時代にグリーントランスフォーメーション(GX)政策やラピダスなど半導体企業に対する支援を主導した。特にGXを巡っては総額150兆円の関連投資を打ち出し、その呼び水としてGX債の発行を財務省に認めさせた功績で知られる。
同時に脱炭素電源として原発再稼働の重要性も強く認識しており、この点でも今井氏と共同歩調を取っている。東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働が大詰めを迎えている中で、経産省と官邸は二人三脚で地元の信頼醸成に努める構えだ。
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