「財務省の提示を差し戻し…」 今井尚哉氏とのタッグで始動した高市政権、異例ずくめの官邸人事の意外な裏側とは【霞が関インサイド】
異例の国家安全保障局長交代劇
高市首相はもう1人、意外な人物を官邸人事で抜擢した。それは国家安全保障局(NSS)の市川恵一局長である。NSSは高市氏が最も重視する外交・安全保障政策の司令塔の役割を担う部署だ。今年1月に就任したばかりの岡野正敬NSS局長をわずか9カ月で退任させ、市川氏を新たに抜擢したのだ。
両氏はともに外務省出身だが、NSS局長は通常、2~3年単位で交代しており、9カ月での局長交代は極めて異例だ。
市川氏は石破前政権で官房副長官補に就き、高市政権の発足で10月10日にインドネシア大使に転出する人事が閣議決定したばかりだった。だが、高市首相は市川氏の登用にこだわり、一度決まった大使人事を覆した。外務省内ではその強引な人事手法を批判する声も出ているが、高市首相が官邸人事を重視している姿勢の表れと言える。
秘書官人事の“差し戻し”
さらに首相秘書官を巡っても高市首相は強い拘りを見せた。
首相秘書官には財務、外務、経産、防衛、厚労、警察の6省庁から1人ずつ派遣されたが、高市首相は財務省が提示した秘書官人事の差し戻しを求め、吉野維一郎主計局次長が就任した。同省が当初示した秘書官人事では、別の主計局次長を充てる案だったが、高市氏と今井氏は敢えて吉野氏を指名したという。
吉野氏は主計局では社会保障を担当したが、主税局経験も豊富で人当たりの柔らかさで知られる。高市氏は「責任ある積極財政」を掲げて大規模な補正予算の編成を睨んでおり、財務省の協力を得るには吉野氏の調整力が必要と判断したようだ。
さらに首相補佐官人事でも高市カラーが鮮明だ。国家安全保障担当の首相補佐官として、航空自衛隊補給本部長を務めた尾上定正氏を登用したからだ。尾上氏はすでに定年退官し、民間に転出していたが、官邸に呼び戻して首相補佐官に任命した。安倍元首相が自衛隊幹部を官邸に呼び、現場からの情報を直接収集していたことにならい、元制服組を抜擢したようだ。
こうした一連の官邸人事には高市氏の思い入れが強く反映されており、安倍元首相の信任が厚かった今井氏と組んで「チーム早苗」が動き出した。




