TBSの低予算ドラマが絶好調のワケ 「ラブコメ+飯テロ+家事労働」という新ジャンルが大バズリ
料理によって成長
「登場人物を演じる有名どころは夏帆、竹内涼真、中条あやみぐらいで、キャスト的にはかなりの低予算ドラマ。それでも、主要キャストの描き方が極端にコミカルでついつい感情移入してしまいます。亭主関白の典型のような勝男は父親から“九州男児”を強いられる幼少期を過ごし実は泣き虫だったという設定。一方、鮎美は人に好かれることばかりにこだわり自分の気持ちを伝えられない性格です。
そんな凸凹男女が離別して初めて分かる相手の存在の有り難さがよく伝わります。さらに、自問自答する際の“心の声”や漫画のようなアニメの登場、登場人物を温かく包み込む高円寺という街の自由な雰囲気にも癒されます。『歩かなくても棒に当たる』で岸田國士戯曲賞を受賞した『劇団アンパサンド』の主宰者・安藤奎氏の脚本が秀逸です」(前出の放送ライター)
過去にも類似作はたくさんあったが、「じゃあつく」の最大の特徴は料理によって成長していくストーリーになっているところだという。
「勝男はマンションを出て行った鮎美の得意料理である筑前煮を自分で再現しようと悪戦苦闘。そこから勝男は出汁のとりかたに没頭し、今度はおでんに挑戦します。第5話ではとりてんの極意をはからずも鮎美から教わり大きな学びを得る。何気ないシーンですが、ささいな日常の中に人々を幸せにするエネルギーがあることを優しく伝えています」(同)
ドラマには美味しそうな料理が毎回たくさん登場する。筑前煮、おでん、もつ焼き、タコス、オムライス――。
「勝男の名前が『海老原勝男』であることから裏では『エビカツ』と呼ばれており、その勝男が手づかみでエビカツ(フライ)を口に運ぶ場面も凝っていましたね。そんな“飯テロ”にも視聴者が引き付けられているのでしょう。複雑な伏線を排除してシンプルなストーリーに徹しているところも、MZ世代に響いているようです」(テレビ誌編集者)
連ドラの低予算化が深刻化するなか、TBSは新たな鉱脈を発見したのかも。
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