維新vs.共産党は新たなステージに突入! 吉村知事と志位委員長も大ゲンカをしていた

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個人の名刺をさらす与党代表の登場

 与党入りした日本維新の会の藤田文武共同代表(44)への風当たりが強くなっている。きっかけは藤田氏の公設秘書を巡る「疑惑」を「しんぶん赤旗」が報じたことだった。

 疑惑そのものへの批判もさることながら、藤田氏への注目度が一気に上がったのは皮肉にも釈明の会見だ。公設秘書の会社への仕事の発注に違法性はない旨を説明するにあたり、感情をあらわにする場面が多く見られたことに違和感を覚える人は少なくなかったようである。
 
 取材記者の名刺をX上でさらしたことも批判の対象となっている。藤田氏は、それについて、「しんぶん赤旗は通常のメディアではなく、日本共産党の機関紙である」「自分は先方に取材記者の名刺を出す可能性も通告していた」などなどの理屈を述べて、自身の正当性を主張した。
 
 しかしこの主張にもさまざまなツッコミを招く余地があるのは確かだ。

「相いれない政党の機関紙の取材ならば承諾なしに名前や電話番号をさらしてもいいのか」「明らかに個人への攻撃を誘発するための行為ではないか」などなど。

 当然ながら、共産党も藤田氏を厳しく批判している。田村智子委員長は11月4日、自身のXで以下のように投稿した。

「『しんぶん赤旗』日曜版は、今年、日本外国特派員協会の『報道の自由賞・日本賞』を授賞した。

 記者たちは政治の闇や不公正に怯むことなく正々堂々と切り込んでいる。

 自分に不都合な取材を受けたからと、SNSを使って記者の名刺をさらす、あまりに恥ずかしい。与党の代表が行えば、権力監視への威嚇になると考えなかったのか」

 もともと維新と共産党は対立関係にある。党のトップ同士の言い合いというのも、これが初めてではない。さかのぼること6年前、今回は比較的冷静なスタンスを示している吉村洋文・日本維新の会代表もかつて志位和夫・日本共産党委員長(当時)とSNS上で言い争っていたことがある。当時のテーマもまた「政治とカネ」で、ここでも「赤旗」の存在がクローズアップされている。

 どんなケンカが繰り広げられていたか、振り返ってみよう(以下、2019年07月10日記事をもとに再構成しました。肩書などは当時のものです)

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2019年の「革命vs.維新」

 革命vs.維新ということか。
 
 共産党の志位和夫委員長のツイートに対して、大阪維新の会代表代行の吉村洋文大阪府知事が批判を展開している。
 
 きっかけは、志位委員長のこのツイート。
 
「維新の会が、そんなに『身を切る改革』がお好きなら、年間317億円の政党助成金を廃止したらどうですか。制度廃止にいたらなくても、共産党がやっているように『受け取り返上』はできますよ。首までどっぷり税金につかりながら、『身を切る改革』とは笑止千万です。」(2019年6月30日)
 
 現在、政党に交付されている政党助成金を日本共産党は一貫して受け取っていない。それは彼らの売りでもある。これに対して、同日、吉村府知事はこう反撃をしている。
 
「共産党が、そんなに『政党助成金の返上』がお好きなら、政党機関紙『赤旗』を役所で売るのやめたらどうですか。共産党が政党助成金を受け取らず、政党の活動ができる資金源は『赤旗』。役所は税金で成立。全国の役所内での赤旗の勧誘販売の禁止法案。日本維新の会の参議院選挙追加公約として検討だ。」

 吉村府知事のツイートを補足すれば、こういうことだろう。
 
 日本共産党が政党助成金を受け取らずに活動できているのは、別の資金源があるからにすぎない。メインとなるのが「しんぶん赤旗」の購読料である。もちろん、自由意思で党員が金を支払っているのならば結構なのだが、その実態についてはかねてより疑問視されている面がある。役所の中で、共産党議員が職員らに、「しんぶん赤旗」の勧誘や集金をしているのではないか――。
 
 たとえば産経新聞(2018年10月18日付)によれば、千葉県は119部、和歌山県は73部、兵庫県は68部も「しんぶん赤旗」を購読しているという。「県内の購読者数」ではなく「県(庁)の購読数」である。ということは、結果的に税金が共産党に還流されているじゃないか、というのが問題視する側の論理なのだ。過去、複数の自治体で、この「しんぶん赤旗」の問題は取り上げられてきた。

共産党とカネ

 実のところ、日本共産党は他党とはかなり異なる財政基盤を持っている。いったいどういうシステムなのか。『日本共産党の正体』(福冨健一・著)をもとに、基本的なところを押さえておこう(以下、引用は同書より)
 
 日本共産党のパンフレットによれば、党員は入党したら、地域・職場・学園の支部に入り、以下の4つのことを大切にして活動する、とある。
 
 (1)支部会議に参加する
 
 (2)実収入の1%の党費を納める
 
 (3)「しんぶん赤旗」日刊紙を読む
 
 (4)学習につとめ活動に参加する
 
「この4つの原則が、他党の真似できない日本共産党の強さの源泉といえます(略)。
 
 入党すると、支部に入り、実収入の1%の党費を納め、『しんぶん赤旗』を購読します。日刊紙3497円、日曜版930円(2018年までは823円)。両紙で4427円です。(略)
 
 党費は、実収入の1%なので年間の実収入が100万円なら1万円、500万円なら5万円で、自民党の党費は一般党員で年額4千円なので、負担はかなり大きいといえます」
 
 たしかに負担は大きい。
 
「党員数は、61年綱領を決定した1961年は8万8千人、82年は48万人、2017年は30万人です(略)。
 
 機関紙(「しんぶん赤旗」など)の読者数は61年が30万、80年は355万、2017年は113万人となっています。(略)
 
 また、主な政党への個人寄付額(2016年)は、「月刊学習」(2018年4月号 日本共産党中央委員会発行)によれば、次の通りです。
 
 日本共産党 80億2362万円
 
 自由民主党 39億7356万円
 
 公明党   25億6560万円
 
 民進党   10億4534万円
 
 社民党    3億7852万円
 
 日本維新の会 3億3788万円
 
 日本共産党の個人献金は自民党の2倍、公明党の3倍以上です」
 
 こうした事情を踏まえて、吉村府知事は「共産党の資金源である政党機関紙の赤旗による総収入金額は年間約200億円。凄まじい共産党の資金力だ」ともツイート(7月1日)。こうした資金力をもとに東京・代々木に自前の党本部ビルも構えている。現在、党本部ビルを所有しているのは、自民、公明、共産の3党のみ。
 
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 両者の対立の根は深いだけに、今回のケンカもそう簡単には終わりそうにない。

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