日本経済は咲き誇れるか… 支持率80%超えの高市政権だから注文したい「やるべき」「やめるべき」選択

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「責任ある積極財政」と「財政健全化」は同義であるはず

 私はこれまで、財政の健全化の重要性を説いてきた立場です。しかし、高市さんの言う「責任ある積極財政」と「財政健全化」というのは、実はあまり変わらないと思うのです。

 つまり、積極財政を唱える人は放漫財政を求めているわけではないし、財政健全化を果たすべきと言う人だって、緊縮財政を求めているわけではないのです。

 どちらも趣旨は同じことで、「適正な財政にしよう」と言っているだけなんです。具体的には物価変動の影響を除いた「実質GDP」の成長率を少なくとも1%は継続して達成していけるような日本でありたいですよね、ということで、そのためにはせっかく脱デフレしてインフレになってきたものを、また元に戻してしまっては困るという意識がある。日銀も同じことを考えているので、上げるべきと思いつつ、実際には積極的な利上げには動いていないのではないでしょうか。

 デフレの長く続いた日本と決別し、実質GDPの成長に軸足を移していく、高市総理もそう考えていらっしゃるのであるならば、「責任ある積極財政」とは「財政健全化」とそう変わらないことであって、「経済政策の大転換」というわけではないのです。

 注視したいのは、高市さんというと、総理になる前のイメージは、やはりアベノミクスに賛成の「上げ潮派」で、お金をどんどん使っていこうというものであり、「金利を今上げるのはアホや」という発言も残しているわけです。それは確かに過去の彼女の意見でしたが、今はどうなのかという見極めが肝心です。

 冒頭にお話ししたようにプライマリーバランスの面から見ても、今の日本はボーナス期ですので、この機会に財政健全化と経済成長という「二兎を追う」姿勢を示して日本の長期国債への信用も担保しつつ、実質的経済成長に軸足を置くチャンスです。

 ですからぜひ、「責任ある積極財政」と仰ったからには、何としても1%の経済成長を果たして頂きたいですし、それができるかできないかが、やはりこれからの試金石になってくると思っています。

【プロフィール】
中空 麻奈(なかぞら・まな)
BNPパリバ証券株式会社 グローバルマーケット統括本部 部副会長/チーフクレジットストラテジスト/チーフESGストラテジスト
慶應義塾大学経済学部卒。一橋大学大学院修士課程修了(経営)。野村総合研究所入所。郵政省郵政研究所出向。1997年野村アセットマネジメントに転籍、クレジットアナリストとして金融セクター、ソブリンを担当。以降クレジットアナリシスに従事。2000年モルガン・スタンレー証券に移籍、事業会社セクターを担当。2004年JPモルガン証券に移籍、クレジット調査部長として全セクターを担当。2008年BNPパリバ証券にクレジット調査部長として入社、2011年より市場調査本部長、チーフクレジットアナリスト、2018年7月からチーフESGアナリストを兼務。2020年2月より現職。経済財政諮問会議議員、財政制度等審議会財政制度分科会起草委員、税制調査会委員、国税審議会委員、行政改革推進会議歳出改革等ワーキンググループ構成員などを務める。著書に『金利上昇は日本のチャンス』『ユーロ連鎖不況』『早わかりサブプライム不況』『図解ソブリンリスク早わかり』『グローバル金融規制の潮流』のほか、共著に『企業法制の将来展望』などがある。

デイリー新潮編集部

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