日本経済は咲き誇れるか… 支持率80%超えの高市政権だから注文したい「やるべき」「やめるべき」選択

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「ガバメント・データ・ハブ」整備の重要性

 高市さんの目玉政策とも言える「給付付き税額控除」の根本には、集めた税金をなるべく不平等の出ないように分配したい、という発想があります。そのコンセプトには大賛成なのですが、政治とは「線引き」を決めることですから、最後はどうしても不平等が起きてしまいます。

 例えば、一言で年収400万円と言っても、独り身の実家暮らしで年収400万円の人と、年収600万円の稼ぎで家族4人を養わないといけない人がいた場合、数字で見れば年収600万円の人が裕福に見えますが、可処分所得でいえば年収400万円の人の方が、余裕があったりするわけです。ほかにも親の介護をしているかどうかなど、人によって状況は様々ですから、年収で線を引く方法では限界があります。

 国の委員会でも提唱しているのですが、私は「ガバメント・データ・ハブ」の構築が不可欠であると考えています。国税庁や市役所・区役所、法務局など、私たちのデータは色々な公的機関が持っているわけですが、そうしたデータ同士は突合されていません。そのため、色んなところにデータはあるのに結局のところ「私がいまどれぐらい困っているか」は把握することができないのです。

 来年度から実施の決まった「高校無償化」も、一律の無償化です。極端な話、年収1億円以上稼いでいる家庭の子も無償化となるわけですが、「それって本当に必要なんでしょうか」と考える人は多いと思います。

 例えば、なにがしかの給付の線引きが年収400万円と規定されたとして、年収が399万円か400万円かによって、貧困家庭への支援が行き届かなかったり、もしくは「働き控え」のような現象が起きたり。そうした不合理な例を世の中に提示し、ガバメント・データ・ハブの必要性を国民の皆さんに理解してもらう工夫を始めるべきだと思います。

 実際の整備は5年や10年という月日がかかりますし、個人情報保護法との兼ね合いもあります。また、データを一元的に管理することで、情報流出や高齢者への詐欺被害の深刻化懸念など、クリアすべき課題もあります。

 それでも、せっかく給付付き税額控除を始めるのであれば、その本来の目的を達成するためにも、制度の延長線上にぜひともガバメント・データ・ハブの整備を考えて頂きたい。

 現実的にはマイナンバーを活用した運用が想定されますが、それも現状の法整備では難しい。最大の問題は技術面よりもそうした制度や法整備の方にあるわけですから、高市さんのリーダーシップにぜひ期待したいところです。

食料品の消費税廃止は「富裕層の方が得する」

 同じ理由から、食料品の消費税廃止は経済政策としては疑問が残ります。

 消費税の引き下げもまた、対象者は一律全員となるわけですが、それで誰が多くのメリットを得るかというと、それは困窮世帯ではなく富裕層世帯の方なのです。生活が苦しく、10円でも安いスーパーで買い物しようと切り詰めている家庭も、デパ地下などで5万円の高級食材を買う家庭も、一律で0%となるわけです。率で言えば貧困層の方が全体支出に占めるウェイトは大きくなりますが、額では圧倒的に富裕層に有利な政策と言えます。

 財源の問題もあり、食料品の消費税0%は1年で5兆円、2年で10兆円ものお金がかかってしまいます。そこに多額の予算を投じる意味が、果たして本当にあるのでしょうか。

 最長2年間の時限でというのが維新の主張ですが、一度下げた税率をもとに戻すことは至難の業です。税金は取られる私たちからすれば、嬉しいものではありませんから、仮に2年間の消費減税が実施された場合、2年後に減税の延長を主張する政党が得票を伸ばすことは想像に難くありません。

 高市さんは現金給付の取りやめという英断を下すことができたわけですから、この食料品の消費税廃止についても、果たして本当に有効な経済政策と言えるのか、議論を深め、しっかりと結論を導き出していただくことに期待したいです。

 もっとも、特定の条件を満たす「本当に困っている人」には消費税が0%になるといった仕組みは整備すべきで、そのためにも前述のガバメント・データ・ハブの整備にはぜひ取り組んで頂きたいです。

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