中0日「山本由伸」193試合出場「大谷翔平」はホントにWBCに出場するのか? 連覇へ問われる「井端監督」の手腕

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井端監督の慧眼に注目

 さらに来年のWBCは日本国内での盛り上がりに欠ける可能性もある。

 米国の映像配信サービス大手Netflix(ネットフリックス)が国内にて独占中継することが決まっており、これまでのように地上波での視聴ができない。そのため、仮に大谷や山本が出場した場合も、これまでのような国民的行事になるかは微妙だ。もし大谷が欠場となれば、興行的にも戦力的にも大きな痛手となるだろう。

 そこで戦力的に、侍ジャパンの頼みの綱となり得るのが、他でもない井端監督の慧眼だ。

 井端監督は2023年の秋に就任後、実戦では若手を中心に起用してきた。しかし、昨年秋のプレミア12で台湾に敗れ準優勝に終わった際は、選手起用や継投策を巡ってSNSなどで疑問を投げかけられたこともある。

 指導者経験が決して豊富とはいえない井端監督だが、選手を“見る力”には定評があるといわれている。実際に、昨年のプレミア12でサプライズ選出した五十幡亮汰は今季、日本ハムで25盗塁をマーク。打率こそ.232に終わったが、準レギュラーとして自己ベストの成績を残した。

 また、井端監督がまだ現役だったころに、ある有名なエピソードが残されている。それは、某スポーツバラエティー番組での出来事。2011年に放送されたその番組で、プロ野球の現役選手100人にインタビューが行われ、現役ナンバーワンの「パワーヒッター」は誰かという結果がランキング形式で発表された。

14年前に柳田のポテンシャルを見いだしていた井端監督

 100人のうち半数以上が、同年に2位に大差をつけてパ・リーグの本塁打王に輝いた“おかわり君”こと中村剛也(西武)に票を投じたが、井端監督が名前を挙げたのは、2011年にソフトバンクに入団したばかりの柳田悠岐だった。

 柳田はルーキーイヤーにウエスタン・リーグの本塁打王に輝いたものの、一軍では6試合に出場しただけ。一軍では、5打数無安打の若手の一人だった。ところが、井端監督は柳田の打撃を二軍の試合で見かけ、「度肝を抜かれた」と絶賛。多くの強打者を差し置いて柳田を名指ししたのだ。

 井端監督の予測は翌年に結果となって表れ、柳田は2年目途中からレギュラーに定着。4年目に打率3割、5年目にはトリプルスリーを達成し、一流選手の仲間入りを果たした。37歳となった今年も、日本シリーズで値千金の一撃を放つなど、球界屈指の強打者として君臨している。

 当時はまだ無名だった柳田のポテンシャルを見出した井端監督の慧眼は、WBCのメンバー選出にも生かされるのではないだろうか。

 ちなみに、これまでWBCで侍ジャパンを優勝に導いた指揮官は王貞治監督、原辰徳監督、栗山英樹監督の3氏。いずれも監督としてチームをリーグ優勝、そして日本一に導いた経験がある。

 一方で、ベスト4止まりだった第3回は山本浩二監督が、第4回は小久保裕紀監督が指揮を執った。山本監督は広島で10年間にわたり監督を務めたが、日本一は未経験。常設化された「侍ジャパン」の初代監督に着いた小久保監督はそれまでプロ野球では一軍監督を経験していなかった。

 井端監督もまた、指揮官としての経験不足が心配されるが、まずはどれだけメジャー組を招集できるかが大きなカギを握る。そのうえで、自慢の慧眼で新戦力を見つけ出すことができれば、連覇に近づくかもしれない。まもなく4ヶ月後の大一番に向けた戦いのゴングが鳴る。

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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